油の話。
2016年08月14日20:36
日記
オリーブオイルをきっかけに(前回の記事参照)、改めて「オイル」について調べるようになったのですが、
食用として取り入れるにしろ、スキンケアで取り入れるにしろ、「オイル」について調べようとすると、「化学」って避けて通れないのだなあ、と思う今日この頃。
私が一番最初に植物性オイルに興味を持ったのは、2013年に読んだ前田京子さんの「シンプルスキンケア」という本がきっかけでした。
>>> 2013年3月当時の日記
この本は、「花」と「水」と「オイル」を使った、その名の通りシンプルなスキンケアの提唱本で、
「水」は主に精製水、「オイル」は植物オイル、「花」というのは精油(エッセンシャルオイル)を指しています。
そしてこの本の中では、16種類のオイルと以下5種類の脂肪酸が登場します。
(1) オレイン酸
(2) パルミトレイン酸
(3) リノール酸
(4) αーリノレン酸
(5) γーリノレン酸
脂肪酸には、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があるのは、皆さんも耳にしたことがあると思います。
ですが、私はこの「飽和脂肪酸」や「不飽和脂肪酸」という文字並びを「記号」のように見ていて
「飽和」は何が「飽和」しているのかや、「不飽和」は何をもってして「不飽和」と呼ばれているのかについて、あんまり深く考えてなかったんですね。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
というわけで、
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸ってそもそもなんなの?
って話なんですけど、代替医療師バニラさんの
>>> 酸化しやすい植物油!!
という記事で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について超絶分かりやすく書いてあったので、画像も含めて引用させていただきたいと思います。
油は 脂肪酸と呼ばれるものの塊です。
脂肪酸には 『飽和』 と 『不飽和』があることは知っているでしょう?
飽和の意味は ほかと繋がれないほど
つまり ほかと手を繋ぐこともできないほど
いっぱいいっぱいってことなの。
飽和しているって 辞書でひいてごらん。
酸素とだって繋がる手は余っていないのですわ。。。
つまり、酸化はしにくいのよ!
不飽和というのは 飽和しきっていない
ということですから 酸化する余地があるという脂肪酸なの。
これは、難しくいえば、
その脂肪酸に二重結合があるかどうかってことよ。
この図 わかるかな 2本で繋がれてるでしょう?
その部分は 折れ曲がっているよ
そりゃそうだ だって そうじゃないと 長すぎて
柔軟じゃないもんね
オメガ6とかオメガ3とかどれも不飽和脂肪酸だよ~!!
不飽和の脂肪酸は 植物油や魚の油にたくさん入っている傾向がありますわ
これは、こうやって化学式でみるといっぱつで分かるんだけど、
普通のママは なんだか難しいと感じてしまって、
見る気も起きないだけだと思うの。簡単なのになぁ。。。
これ見ながら 説明すると わかるんだよ
私の高校は「化学」が必修じゃなかったので、私の場合「化学 I」すら通っておらず、
つまり、化学の素養がゼロなんですね。
だから、「構造式」(↑で引用している画像)なんて見るだけで「無理無理無理無理」と逃げ腰になってたんですけど
この記事を読んで初めて「そういうことだったのか!w」って知ったんですよ。お恥ずかしながら。w
なので今回の日記は、私のように「全く化学を通ってこなかった人」とシェアをしたいお話です。
ちゃーんと化学を学んできた方には既知のことですので、なんの役にも立ちません、と先に申し上げておきます。( ´∀`)
二重結合とは。
バニラさんの記事でもその名前が出てきていますが「二重結合」とはなにか?という話から。
二重結合(にじゅうけつごう、英: double bond)は、通常2つの代わりに4つの結合電子が関与する、2元素間の化学結合である。 最も一般的な二重結合は、2炭素原子間のものでアルケンで見られる。 2つの異なる元素間の二重結合には多くの種類が存在する。 例えばカルボニル基は炭素原子と酸素原子間の二重結合を含む。ーwikiよりー
こういうの読むと「wikiのwikiくれ」と思うんですけど
先ほどの緑の画像と似た、こちら↓の構造式が分かりやすかったので薬剤師シータヒーラー健康法さんからお借りしてきました。
上が飽和脂肪酸、下が不飽和脂肪酸の構造式です。
「C」が炭素、「H」が水素、「O」が酸素。
炭素(C)には結合する腕が4本あり、
「飽和脂肪酸」のほうを見ると、炭素(C)から1本ずつ手が伸びて、上の水素(H)や横の炭素(C)の4カ所と繋がっているのが分かります。
これを飽和結合といい、全ての腕が1本ずつほかの分子と結び合っているのが「飽和脂肪酸」です。
そして下の「不飽和脂肪酸」の方を見ると「↑」で指している部分がありますね。
炭素(C)に4本ある手が、同じところで2つ使われているので、
炭素(C)から伸びた手が、4カ所ではなく3カ所としか繋がっていません。
この「=」の部分が二重結合であり、その手は切れやすく、切れた手には酸素原子(O)がつくので、酸化しやすい脂肪酸とされます。
二重結合を1つでも持っていると、「不飽和脂肪酸」に分類され、不和脂肪酸の多くは常温で液体です。
一方の飽和脂肪酸は酸化しにくく、常温で固体であることが多く、「固い脂肪」とも呼ばれます。
ココナッツオイルや牛脂などがそうです。常温で、固まっていますよね。
不飽和脂肪酸の種類
そして不飽和脂肪酸にも種類があって
二重結合を1つしか持たない脂肪酸のことを「一価不飽和脂肪酸」、
二重結合を2つ持っている脂肪酸のことを「二価脂肪酸」、
3つだと三価、、、となり、
二重結合を2つ以上持っている脂肪酸のことを「多価不飽和脂肪酸」と言います。
二重結合が多いほど、酸化しやすい脂肪酸となり、そのような脂肪酸を多く含む油は、必然的に酸化しやすい油になるというわけですね。
余談ですが、「一価不飽和脂肪酸」「二価不飽和脂肪酸」ではなく「モノ不飽和脂肪酸」「ジ不飽和脂肪酸」と呼ばれることもあります。
「モノ」や「ジ」はギリシャ数字で、モノ(1)、ジ(2)、トリ(3)、テトラ(4)、、と続いていくんですけど
1つの路線を走るから「モノレール」
独り言だから「モノローグ」
2つの板挟みだから「ジレンマ」
4つの足を持ってるから「テトラポット」
って、これら全部ギリシャ数字からきていたことを初めて知りました、とねじこんでおきます。
話戻りまして、「二重結合」を知ると、酸化しやすい精油の話にも繋がるんですけど、以前、こちらの日記で
>>> 三上杏平先生による精油の化学セミナーを受講
という記事を引用させていただいたのですが、
精油にも酸化しやすい成分というのがあって、モノテルペン炭化水素という成分を紹介しました。
この成分が酸化しやすい理由というのが
モノテルペン炭化水素というのは、炭素と水素しかないんです。酸素を持っていません。
精油というものは必ず二重結合を一つは持ってるということを、先ほど話ました。不飽和ですね。
だから空気中に触れると、酸素をどうしても欲しがるんです。ですからリモネン系のものは、酸化が非常に早い。
この記述を引用させていただいた当時は、モノテルペン炭化水素が、炭素と水素しか持っていないために、酸素を欲しがる、というところにフォーカスしていたんですが
今になって読み返すと
精油というものは必ず二重結合を一つは持っている
すなわち、全ての精油が不飽和であることのほうに、今更ながら「そういうことだったのかー!!」っと。
精油の成分は、ほとんどが炭素(C)と水素(H)の化合物で
炭素原子同士の結合の仕方や、官能基の種類によって分類されており、
その構造は脂肪酸よりもなんだかもっと複雑なのですが (なので今回は深入りするのやめましたw)
精油もオイルと同様に、化学を避けて通れないのだなあということを改めて感じました。
酸化しやすい脂肪酸は?
さて。
冒頭の方で、5つの脂肪酸を挙げました。
(1) オレイン酸
(2) パルミトレイン酸
(3) リノール酸
(4) αーリノレン酸
(5) γーリノレン酸
これらに二重結合がいくつあるのか、というは、「分子式」で見ることが出来ます。
例えば、オレイン酸の分子式は「C18:1」。
こちら↓はオレイン酸の構造式。
「C18:1」という式は、18個の炭素原子(C)をもつ不飽和型で、二重結合が1という意味になり、オレイン酸は一価不飽和脂肪酸ということになります。
リノール酸の分子式は「C18:2」。
18個の炭素原子をもつ多価不飽和型で、二重結合が2つという意味になり、リノール酸は多価(二価)不飽和脂肪酸になります。
リノレン酸の分子式は「C18:3」。
18個の炭素原子をもつ多価不飽和型で、二重結合を3つもつという意味になり、リノレン酸も多価不飽和脂肪酸です。
上↑の5つの脂肪酸の中には名前が出ていませんが、「ステアリン酸」という脂肪酸の分子式は「C18:0」。
「0」ということは二重結合が1つもないということで、ステアリン酸は飽和脂肪酸になるわけです。
ステアリン酸を多く含むものの中に、先ほど例に挙げたココナッツオイルや牛脂が挙げられます。
改めて並べてみますと
(1) オレイン酸 C18:1
(2) パルミトレイン酸 C16:1
(3) リノール酸 C18:2
(4) αーリノレン酸 C18:3
(5) γーリノレン酸 C18:3
こうやって見ると、この並び順に、二重結合の数が多いこと、
そして、この脂肪酸たちは漏れなく二重結合を持っているので、全てが不飽和脂肪酸でもあることが分かります。
一般的に「酸化しやすい」と言われるオイルがありますよね。
例えば、亜麻仁油、ローズヒップオイル、月見草オイルなどです。
もうお分かりかと思いますが、亜麻仁油やローズヒップオイル、月見草オイルが酸化しやすいとされるのは
これらに、二重結合の多い不飽和脂肪酸である、「リノレン酸」が多く含まれているからなのです。
ヨウ素価
酸化しやすい油として、亜麻仁油、ローズヒップオイル、月見草オイルを例に挙げましたが
逆に、酸化しにくいオイルと言えば、私の頭に浮かぶのはココナッツオイルやホホバオイルです。
リノレン酸が多く含まれているものは酸化しやすい、という知識はもともとあったのですが
「酸化しやすい」とひとことで言っても、「ローズヒップオイル」と「月見草オイル」、はたまた「亜麻仁油」を比べた時に酸化しやすい順番は?と聞かれると、「はて?」でした。
皆様、「ヨウ素価」ってご存知でしょうか?
ちなみに私はつい数日前まで知りませんでした、と正直に申し上げておきます。w
ヨウ素価とは、オイルの中の不飽和脂肪酸の量を示す指標で
つまりは、この数値によって、「オイルの酸化のしやすさ」を見ることが出来ます。
>>> 植物油脂のヨウ素価94種類の一覧とゼロから分かる計算方法
これで見ると、「酸化のしやすさ」が「数値」で分かります。
例えば先に触れた「酸化しやすいオイル」3つを例に出しますと
ローズヒップオイルのヨウ素価は183.7
月見草オイルのヨウ素価は168.1
亜麻仁油のヨウ素価は190.3
ヨウ素価は、同じ油脂でも抽出方法や原材料の地域、商品やロットによっても変化するので、この数字が「絶対」ではないのですが
この数値だけを見ると
月見草<ローズヒップオイル<亜麻仁油
の順に酸化しやすいことが分かります。
「酸化しにくいオイル」として例に出した、ココナッツオイルとホホバオイルも見てみましょう。
ココナッツオイルのヨウ素価は12.6
ホホバオイルのヨウ素価は76.5
数値の小さい順に並べてみると
ココナッツオイル:12.6
ホホバオイル:76.5
月見草オイル:168.1
ローズヒップオイル:183.7
亜麻仁油:190.3
こうやって数値で見ると、ココナッツオイルと亜麻仁油の数値がいかに大きく開いているかが分かりますね。
先日、GI値について書いたときに
70以上が高GI値
60以上70以下が中GI値
60以下が低GI値
という「くくり」をご紹介しましたが、ヨウ素価にも「くくり」があって
ヨウ素価が130以上の油は乾性油
100から130のものは半乾性油
100以下のものは不乾性油
と分類されており、単純にこの分類だけで見ると
不乾性油<半乾性油<乾性油
の順に酸化しやすく、不乾性油に属しているオイルは、それこそヨウ素価にもよるけれど、「酸化しにくいオイル」と言えます。
先にも述べたように、ヨウ素価は、同じ油脂でも抽出方法や原材料の地域、商品やロットによっても変化するので、この数字が「絶対」ではないのですが
食用にしろ、スキンケアで取り入れるにしろ、「ヨウ素価とは何か」を知れたのは、大きな収穫かなと思います。
一言で「酸化しやすい」「酸化しにくい」とざっくり知ってはいても、
2つ以上のオイルを比べた時に、どちらのほうが酸化しやすいのか、という目安を知ることが出来るので、
今後、オイルを選ぶときや、保存期限の参考になるかなと。
参考文献
今回、油のことを調べるにあたり、Timeless Editionというサイトにかなりお世話になりました。
いわゆる「まとめサイト」だと思うんですけど、扱ってるトピックがマニアック!w
>>> 植物油脂のヨウ素価94種類の一覧とゼロから分かる計算方法
もそうなんですけど、このほかにも
>>> 油脂の基本
というカテゴリに分類されているまとめは、どれも面白い!
>>> 初心者にもすぐわかる、精油の化学の基礎!|成分から化学的に分類
なんていうのもありました。
あ、そうそう。
先日、オリーブオイルを選ぶ時のガイドラインとして「OLIVE JAPAN」というコンテストのことをご紹介しましたが(参照)
イタリアには、オリーブオイルのミシュラン版のような、「FLOS OLEI(フロス・オレイ)」というガイドブックがあるそうです。
FLOS OLEIは、世界各地のオリーブオイルを取り上げ、オイルはもとより、生産者の栽培製造方法にも重点を置いて評価しているガイドブックで、うおー!見たい!!と思ったんですけど、残念ながら日本語版はないよう。
ですが、OLiVO(オリーヴォ)という会社が、 FLOS OLEIでその年に最高評価を獲得した旬のものや、その他の権威ある大会で受賞しているオリーブオイルを直輸入しているそうな!
銀座松屋、阪急うめだ、エキュート品川、二子玉ライズなどに店舗があり、通信販売もやってます。
>>> ショップリスト
>>> OLiVO オンラインショップ
まだ行けてないんですけど、近々「本物」のオリーブオイルを買いに行こうと思ってます。^^
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