後藤隆之 諸星晃一
2016年8月13日13時07分
終戦から71年。戦争を経験した人が少なくなっていく。体験談や、言葉に込められた思い。それを将来へ伝えるための方法を、戦争を知らない世代も考えている。
■芽生えた「被爆3世」の自覚
広島が71回目の原爆の日を迎えた6日。名古屋大大学院生の愛葉由依さん(22)=愛知県愛西市=は自宅のテレビで、平和記念式典の様子を見ていた。隣には祖父の加藤浩さん(89)。71年前に被爆した。
「この日を繰り返してはいけない」。愛葉さんは今年の「8月6日」ほど、自分が被爆3世だと意識したことはない。大学の卒業論文で祖父の被爆体験をとりあげたことが影響しているという。「家族に被爆者がいるのに、何も知らないのは恥ずかしい」と思いテーマにした。
衛生兵だった加藤さんは1945年8月7日に広島市入りした。傷病者を手当てし、多くの遺体を火葬した。被爆したことで偏見を受けたことがあり、家族にも詳細な体験は語ってこなかったという。だが、「無駄に人が死んだ。戦争は避けたい。その思いを残せる」と、愛葉さんの求めに応じた。
「『兵隊さん、水をくれ、水をくれ』って言う人がいても、上官に与えるなと言われていて。水を飲ませたら、政府が言う通りに死んでしまうなって思って。与えなかった」
「後悔は? 助けてあげればよかったとは思わないの」と尋ねる愛葉さんに、加藤さんはこう答えた。
「そういう気持ちがあったって…
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