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平成14年8月12日
「ゲーム脳の恐怖」の著者
森 昭雄・日本大学教授が警告

“中毒”は幼児期に形成
若年性痴呆症が増加へ
お勧めは体動かすゲーム

回復すれば明るく積極的に/親たちに“福音”,大きな本の反響

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森昭雄教授の話題の本『ゲーム脳の恐怖』
 ――ゲームで集中力がつくなどとも言われていますが。

 ゲームをやっているときはそれに反応しているわけだから、それに集中しているという表現は適切かもしれないが、これは、前頭前野がほとんど関与しないので私は集中力とは違うと思う。視覚から入って手が動く、それを集中とは言いたくない。反応性の問題だ。それをやめるとすべてのことに対して集中はないわけです。最近問題になっている注意欠陥多動障害のように集中力が低下し、落ち着きがない子どもに育つ可能性があります。

 ――非常に悲観的ですが、回復する可能性は。

 実際に回復した子がいます。子といっても大学生ですが。実験をしたらβ波が全然でなくて、当初、彼自身は大変ショックで、「結婚して子どもができたらゲームを絶対やらせない」と言っておりながら、自分はゲームをやめられない状況でした。私も困りましたが、ある時、お手玉をやると前頭前野も含めた脳全体が働くことに気が付きました。それで彼にお手玉を三個でやらせたのです。お手玉は手元に落ちてくる時の状態が一回一回違いますから、手順を絶えず考えなければならない。彼は百六十回ぐらいできるようになったが、それを三カ月ほどやるとβ波は正常の状態に戻ったのです。気を抜くとβ波がスッと落ちる状態ですが、顔つきも変わった。非常に明るくなって、うちの大学院生やゲーム仲間から「あいつ変わったみたい」という話になりました。彼自身も変わった感じがあり積極的になり休みなどは自転車で自然を求めて遠くまで出かけると言っていました。もちろんゲームはまったくやらなくなり、今はサイクリングを趣味にしているようです。

 ――この本の反響はどうですか。

 ものすごいものがあります。たとえば二十三歳の女性は、この本を読んでショックを受け、「スイッチ一つで現実逃避できる世界に入り込んでしまった。自分自身は人生の貴重な十三年間という時間をムダにしてしまった。ゲームをやっているときはいいが、終わるとむなしくなって次のゲームを探す。自分の心の中で何かがマヒし欠落し、無気力になっていってしまった」と告白しています。そして「これから警告を続けてください」と言ってきました。

 ある小学校の先生からは、自分の子どもはもちろん父兄に対してもゲームはだめだと言い続けてきたが、反論されると説得しようがなかったそうです。「その矢先にこの本を出してくれてよかった。よくぞ出版してくれた」と感激しています。ある講演でお母さんたちから質問攻めに遭いました。母親は直接子どもを見てますから、現実の問題としてあるわけです。子どもから集中力がつく、反射が良くなると言えば、親として反論できないから買ってやる。子どもに言われっぱなし。科学的裏付けがないからお母さん方も何を言ってよいかわからなかったそうです。お母さんたちの希望からこの本は生まれました。

 ――今後の研究内容は。

 幼児のいろいろな遊びを含め、前頭葉の働きを良くするにはどうしたらいいのかということの研究です。映像も含めてどういう刺激がよく働くのか。先般、映画監督が会いたいということでしたが、それは昔の白黒の画面とかを子どもは結構一生懸命見るそうです。カラーよりむしろ白黒のほうがいいのかな、というような問題提起がありました。そういうことも調べたい。

 先般モンゴルに行ったとき、草原にそよ風が吹いて、ひばりが鳴き、とんびが飛んでいた。もちろん虫も鳴いていた。幼児期の体験を思い出しました。だから、幼児期というのは教育を含め、大変貴重です。その年代まできちっとしてあげるのは大人の責任です。ある程度ものごころつけば、これは空想のものであるとか、善悪の判断はできますが、幼児期はそれがないから、親がきちっとしてあげなければならない部分がある。


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