【リオデジャネイロ村上正】リオデジャネイロ五輪のバレーボール女子で2大会連続のメダルを目指す日本の最年長、山口舞(33)はプレーで難病と闘う妹を勇気づけ、家族の希望になっている。2組各6チーム中4位までが準々決勝に進む1次リーグで現在1勝2敗。山口はいずれも試合後半に流れを変える役割で投入され、通算のスパイク決定率は44%だ。
三重県志摩市出身で友達に誘われ小学4年でバレーに出合った。小学校卒業時には身長が164センチあった。
小学6年の時、3人姉妹の末妹、美紗希さん(21)が誕生した。長姉の山口は膝の上に乗せ、娘のようにかわいがった。美紗希さんには先天性の難病があり、右手の力が入らず歩行は困難、耳が聞こえず意思疎通もままならなかった。医師は「小学校には通えないだろう」と告げた。
山口はバレーの強豪・大阪国際滝井高に進み寮生活をした。試合の応援は母由香さん(54)だけで、父裕司さん(51)は家で美紗希さんの面倒を見た。
山口は不満で入学11カ月後、「美紗希も連れて皆で来てよ」とせがんだ。チームメートには入学後すぐ美紗希さんのことを話していた。末妹に自分のプレーで元気になってもらいたかった。この後、家族全員で応援に駆けつけるようになった。
高校卒業後の2002年、山口はVリーグの現・岡山シーガルズに入団した。仲間思いで知られ、同僚で末妹と同世代のリオ五輪代表セッター、宮下遥(21)には「お母さん」と呼ばれ信頼されている。
09年に日本代表入りしたが、その頃から美紗希さんは体調を崩すことが多くなり、2度の手術は代表戦と重なった。由香さんは、テレビで試合が流されると「お姉ちゃんも頑張っているから美紗希も頑張ろうね」と声をかけ、美紗希さんは静かに放映に見入った。
山口のバレーは家族の絆を深め、末妹に勇気を与えてきた。ロンドン五輪で持ち帰った銅メダルは家族の誇りだ。世界最終予選のメンバーとしてリオ五輪出場を決めた時も地元で家族から祝福を受けた。
「プレーできる幸せを感じている。妹の分まで頑張りたい」。山口の心には末妹への抑えきれない思いと活躍への誓いが交錯する。
読み込み中…