リオ五輪報道のために、BBCはどんな準備をしてきたか?:アラート機能、ライブ配信、360度動画

イギリス公共放送のBBCは、リオ五輪でさらなる進化を遂げる。

「視聴者は上質なライブストリーミングを期待している。我々はそういった体験を最適化しなければならない」と話すのは、BBCスポーツの制作を担うネイル・ホール氏だ。「BBCのライブ問題に改良を加え、オーディエンスがデバイス経由で閲覧する際に生じるロード時間をはるかに短縮し、プラットホーム全体に渡り、選択肢を増加させた」。

その言葉どおり、大会初日からBBCは、BBCスポーツのサイトとアプリで、各日最短でも20時間以上24本の高画質ライブ動画ストリーミングを提供している。また、そのなかから編集部が選りすぐったものをiPlayerでも見逃し配信を行っているという。

「我々はユーザーに多くの選択肢を提供し、より便利に、そして最高のサービスを作り上げていくことに注力している」と、彼は付け加える。ライブストリーミングはさておき、BBCは2016年オリンピックに先立って、その提供製品をアップグレードしてきた。

より個別化されたアラート機能

同社によると、BBCスポーツの閲覧者は1週間で400万人。「人々がアプリで愛用している主要機能が、アラートである」と、ホール氏は話す。また、200万人が何らかの形でアラートを受け取れるよう登録しているという。

ライブイベント満載の夏に合わせて、同社は9カ月前に「マイスポーツ」セクションを立ち上げた。「UEFAヨーロッパチャンピオンシップとウィンブルドンで、これが非常に勢いに乗ってきた」と、ホール氏は語る。その期間中、同セクションの1週間当たりのユニーク閲覧数は、0から17万に伸びたという。登録後、ユーザーは300以上のスポーツトピックをフォローアップできるようになる。

リオに向けて、BBCはアラート提供数を増やしてきた。たとえば、イギリスが上位3位以内に入るとメダル獲得アラートが届いたり、特定の国や競技のニュースが通知されたりする。また、製品により多くのリマインダーを組み込み、ユーザーが見逃したくないイベントのプランを立てられるようにした。

1日5本のライブ動画をFacebookで

「2012年の段階から大きく変わったことのひとつは、当時はWeb上での動画を推進し、ユーザーを我々に呼び戻したいと考えていた点だ」と、ホール氏は認める。「いまでもBBCスポーツに戻ってきてほしいとは思っているが、コンテンツのほとんどをプラットフォームへ移し、ユーザーがそれらを発見しやすいようにしている」。

BBCスポーツが運用するソーシャルアカウントをフォローしている人の数は、プラットフォーム全体で約2700万だ。多くのパブリッシャー同様、ユーザーを自社サイトへと呼び戻すことと、ソーシャルでオーディエンスとエンゲージすることのバランスを取ることが昨今の課題となっている。

Facebookのライブ動画は、後者のカテゴリーに属する。BBCは主にイギリスのオーディエンス向けに、リオ五輪開催中は毎日3本から5本のFacebookライブ動画を配信する予定だ。これらの多くは観客席から撮影され、閲覧者は家にいながら間近で競技を観覧する気分を味わうことができる。このフォーマットは、UEFAヨーロッパチャンピオンシップ期間内に成功を収めた。有名司会者のダン・ウォーカー氏によるBBCユーロスタジオ内ツアーのクリップは、7万ビューを獲得している。

BBCはすでに、Facebookのライブ動画を利用して、スポーツコンテンツを盛り上げている。たとえば、ボクシング選手のアンソニー・ジョシュア氏が舞台裏についてQ&Aに応じるといった内容だ。UEFAヨーロッパチャンピオンシップ期間中、もっとも好感触の投稿が集まったのは、Facebookのライブ動画がメイン放送への補足情報を流したときだということがわかった。そこでITVのフットボールの試合のハーフタイムには、BBCのFacebookライブストリーミングは、元サッカー選手のアラン・シアラー氏による解説を流す。同氏はその日の試合を振り返る「マッチ・オブ・ザ・ディ」というハイライト番組にも登場する。

総計100時間もの360度動画

今回のオリンピックに向けて、BBCが行った開発のうち、もっともメディアを賑わせたのはオリンピック・ブロードキャスティング・サービスと提携することで実現した、360度動画によるイベントのライブ放送だ。1カ月以上にわたって総計100時間もの360度動画が放送されている。サムスン(Samsung)のGearVRヘッドセットやGoogle段ボール製ヘッドセットを利用して、BBCスポーツ360アプリから動画をダウンロードする、またはBBCのサイト「TASTER」へアクセスすることでも視聴できる。

BBCが自社のリサーチ・アンド・ディベロップメントラボで360度動画への取り組みを開始したのは、2014年のコモンウェルスゲームズからだ。それでも、ほかの放送関連企業同様、この分野での体験についてはまだ学ぶことだらけだと、ホール氏は認めている。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac
Images courtesy of the BBC.