天文学の常識を覆す「第9惑星」は本当に存在するのか?
2008年に神戸大学の研究グループが、天文学の常識を覆す論文を発表して注目を集めました。未知の大型天体「第9惑星」の存在を予測したのです。彼らはこれを「惑星X」と呼んでいます。
実は海王星軌道よりも外側にある太陽系外縁天体の軌道分布には、いくつかの謎がありました。海王星の軌道の外側に円盤状に広がるエッジワース・カイパーベルトが50天文単位(1天文単位=約1億5千万キロ)で途切れているように見えるのはなぜなのか。それよりも遠方、つまり海王星の影響が小さいはずの領域にも大きく歪んだ軌道や大きく傾いた軌道を持つ天体があるのはなぜなのか。これらを海王星の存在だけで説明することはこれまでできていませんでした。しかし神戸大学のグループは、未知の大型天体「惑星X」の存在を仮定することで、その軌道分布をうまく説明できることを示したのです。
実際に、太陽系外縁天体の軌道進化を、この仮定のもとにコンピューターシミュレーションしたところ、現在観測されている分布を再現できました。この「惑星X」は、地球の0.3~0.7倍ほどの質量を持ち、サイズは地球よりもやや小さい氷惑星で、現在は近日点(太陽にもっとも近い点)距離80天文単位以上、遠日点距離は120~270天文単位の楕円軌道を巡っていて、軌道の傾きは20~40度とされています。
そんな中、09年にNASAの赤外線天文衛星ワイズが打ち上げられました。これは赤外線望遠鏡を搭載した、これまでにない高い感度で全天をくまなく観測できる宇宙望遠鏡です。残念ながらそのデータから、太陽より26000天文単位以内に木星質量以上の新たな天体は存在しないこと、10000天文単位以内では土星質量の天体も存在しないという研究結果がまとめられました。それでも、「惑星X」の存在は除外されませんでした。
その後も、新しい太陽系外縁天体の発見が続き、遠方まで飛び出すような細長い楕円軌道を持つ散乱円盤天体も、その数を6個にまで増やしています。そして、16年1月、こうした天体の発見を主導しているカリフォルニア工科大学の研究グループは、遠方にまで到達するそれら6個の天体の軌道に、不思議な特徴があることに気づきました。どう見ても、その軌道が一方に偏っているのです。また、6天体の軌道の傾きもかなり一致していたのです。
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