15日解散 政治に斬新な表現、若者の共感呼ぶ
戦後71回目の終戦の日となる8月15日、安全保障関連法の廃案などを訴えてきた学生たちのグループ「SEALDs(シールズ)」が解散する。先月の参院選で改憲勢力が伸長し、憲法改正の発議が現実味を帯びている。それでもシールズは結成から1年3カ月、既成の政党や運動体にはない斬新な表現や活動のスタイルで政治を揺さぶり、若い世代の存在感を示してきた。【山崎征克、平川哲也】
シールズは2015年5月3日の憲法記念日に、東京都内の明治学院や立教、上智などミッション系の私立大学生たちが結成したとされる。メンバーは集まることもあるが、集まれなくても無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで手際よく物事を決める。「安保法制反対」でゆるやかにつながり、東北や関西、沖縄でもグループが生まれた。
グループは国会前や各地で集会を開き、安倍政権批判を展開。若い世代の共感を呼び、抗議のうねりは安保関連法が成立する昨年9月に頂点に達する。その後も活動を続け、今年の参院選では野党共闘の成立に貢献した。
グループの解散は当初から参院選後と決まっていた。中心メンバーの一人である奥田愛基(あき)さん(24)は公示前に取材に応じ、解散について「さびしくはない。むしろすがすがしいくらいの気持ち。今後もっとできることがあると思っている。解散が惜しいと思うなら自分で動き出してほしい」と語っていた。
同じく中心メンバーの明治大大学院生、千葉泰真(やすまさ)さん(25)は13日、これまでの活動を振り返って「参院選の野党共闘など新しいことができ、貴重な時間だった。変化のきっかけみたいなものを社会に残せたのではないか」と話した。安保関連法が施行され、参院選では改憲勢力が3分の2を超すなど力量の限界を受け止めながらも「シールズという名前はなくなるが、社会の一員として常に自由や民主主義と向き合いながら生きていきたい」と決意を語った。
シールズ関西も13日に大阪市内で記者会見した。メンバーの神戸大大学院生の塩田潤さん(25)は「(参院選で)改憲の危うさを伝えきれなかった反省はあるが、市民参加型の選挙としては大きな前進が見られたと思う」と強調。「日常生活と政治を近づける成果はあった」と語った。
シールズ関西は、東京と同様15日に解散する。一方、沖縄のグループは活動を継続するという。
【ことば】SEALDs
首都圏の学生らが2015年5月に結成し、国会前などで抗議行動を行ってきた。立憲主義を軸に格差是正や平和外交、市民の政治参加などを訴えている。名称は「Students Emergency Action for Liberal Democracy(自由と民主主義のための学生緊急行動)」の頭文字を取って名付けた。