文/堀井憲一郎(コラムニスト)
なぜ女子マネは排除されたのか?
この夏、高校野球大会の甲子園での公式練習で、女子マネージャーがグラウンドから排除される、というニュースがあった。
不思議な出来事である。
おそらく「とても日本的なもの」が根本にあり、「日本的なことは、言葉で説明されることがない」という事態が重なり、奇妙な現象となったのだろう。
表面的な問題点は「高校野球は、頑として女性を受け入れていない」というところにある。
おそらく、そこに明確な理由はない。
大会運営側は、「参加者は男子に規定している」から、と説明している。そのあと「体力差のある女子がケガを負う可能性のある状況を作りたくない」とのコメントがついてくる。あまり納得できる説明ではない。おそらく「若いオスより若いメスの身を守ったほうがいいでしょう」というコメントで同意を得ようとして、失敗しただけだろう。何の説明にもなっていない。
* * *
女子マネージャーをグラウンドに入れたほうの心持ちも、よくわからない。
「ご褒美として入れてあげたかった」と監督は言っているが、それはおそらく女子マネージャーを抱えるすべてのチーム責任者がおもっていることである。なぜ、あなたたちだけが敢えてそこに踏み込んだのか。その説明にはなっていない。
女子マネージャーにも少し違和感があった。
彼女は真新しいユニフォームに身を包み、大きなボールバックを肩から下げ、ロングヘアーをなびかせて、ノッカーにノックボールを渡していた。
ちなみに「公式練習」でのことである。
甲子園出場校は、本大会の前(本年だと開会式が8月7日で、その前の8月1日から4日まで)に甲子園球場を使って公式練習をおこなう。参加49校が、1校30分間ずつ、甲子園球場を借り切って練習する。
女子マネージャーは、帽子のうしろからロングヘアーをたなびかせてグラウンドに立っていて、女子高生らしく爽やかである。でもなんか変である。
高校の野球部員は必要以上に頭髪が短い。ここの部員はみんなきちんと坊主頭だった。その選手に混じって練習を手伝う女子はロングヘアーをたなびかせない、というものではないのだろうか。「いかにも女性である」という風体で、練習を手伝われるとふつう選手は困惑する。
でも彼女は、甲子園球場ではロングヘアーをたなびかせて、ノックボールを渡している。
この女子マネージャーが甲子園に立っている写真を、うちの女性スタッフに見せたとき、「この子、手首にヘアゴムを複数巻いてますね」、と見つけ、それで髪を留めればいいのに、と指摘してくれた。でも留めていない。
忖度するに、彼女なりに「聖地甲子園に立つための正装」という気持ちがあったのではないか。あくまで想像ではあるが。
三者それぞれ、言葉にできないものを抱えているのだろう。黒澤明の映画「羅生門」のようである。三人三様、同じ現場にいたのだが、三人とも何かの理由で真実を語っていない。
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