騒音などへの配慮から羽田空港の離着陸時の飛行ルートにかけている「しばり」を一部ゆるめ、発着回数を増やす。

 そんな取り組みが動き出す。

 国際線の発着便数を増やすのが狙いだ。成田空港とともに、急増する訪日外国人の受け入れ態勢を強化し、出国者も含めて都心にある便利さを生かす。2020年の東京五輪までに実現させたい考えだ。

 ただ、良いことずくめではない。4本ある滑走路をより有効に使おうと、東京都や埼玉県の上空を現状より低い高度で飛ぶルートが設けられる。南風の時に埼玉県上空を通って練馬から新宿、渋谷、品川と高度を下げながら着陸するルートなどが加わる。

 騒音による生活への影響を抑えるため、新ルートでの飛行は午後3時から7時までに限る。空港着陸料の体系を見直して低騒音機の導入を航空会社に促す。関連法の規定より広く学校や病院で防音工事を施す。そんな対策をとるという。

 だが、航空機を意識することがなかった日常が変わることへの抵抗は、小さくはあるまい。国土交通省と自治体は住民への説明をつくさねばならない。

 説明会は昨年7月~9月と12月~今年1月の期間に、東京都と埼玉、神奈川両県の十数カ所で開かれ、あわせて1万1千人余りが訪れた。

 来場者一人ひとりに説明要員が対応する「オープンハウス方式」がとられた。羽田空港の発着便数を増やす必要性は理解しながら、騒音や安全を心配する人は少なくなく、詳細な情報を求める声も多かったという。

 国交省はさらに説明会を続けてはどうか。説明会の第2弾では、同様に市街地で離着陸する大阪(伊丹)空港周辺での撮影映像が視聴できたが、羽田の新ルートをCG映像で示すなど工夫の余地はあるだろう。もっと多くの人に周知するため、大きな会場での会議方式の説明会も必要ではないか。

 安全面では、離着陸時に事故を起こさないことはもちろん、飛行時にできた氷塊や、部品の落下事故も心配だ。

 成田空港周辺ではこの10年で20件余りの落下が確認されているが、人口密集地域では大惨事にもなりかねない。翼やエンジン、排水管への凍結防止ヒーターの装着、機体の点検整備とチェックの徹底が欠かせない。

 ルート変更を打ち出したのは国交省だが、住民と日々向き合うのは自治体だ。両者はともに責任を自覚し、丁寧に手続きを進めてほしい。