大学生が、地域の子供を見守る活動が広がっている。従来は高齢者が中心だったが、「お兄ちゃん世代の話なら、子供も受け入れやすい」と期待は大きい。大阪府寝屋川市で夜に外出していた中学生2人が殺害された事件は、13日で発覚から1年。大学生は「僕らの活動が事件の防止になれば」と意気込む。
【中一男女殺害事件の経緯】
夏休みに入ったばかりの先月26日。青色回転灯をつけて寝屋川市内をパトロールする車「青パト」の窓から、摂南大3年の上中野良典さん(20)が「こんにちは」と子供たちに声を掛けた。車からは地元小の校歌が流れる。公園では園内を掃除しながら「学校は楽しい?」と話しかけた。
摂南大生による青パト活動は、地域防犯が専門の中沼丈晃准教授が2010年に始めた。「事件はショックで無力さを感じた」と話す上中野さんは、昨秋から活動に加わった。「子供が笑顔で近寄ってくれるようになった」と話す。中沼准教授は「年も近いので、何かあればあの人たちに相談しようと思ってもらえている」と語る。
警察庁によると、5人以上で月1回以上活動する防犯ボランティア団体は、昨年末で4万5066団体。メンバーの平均が10~20代なのは729団体(全体の1.6%)にとどまるが、06年末の173団体(同0.6%)から格段に増えた。
事件に遭った2人は外で夜を明かし、無料通信アプリ「LINE」で友人とやり取りしていた。専門家は「スマホで『つながっているから安心』と誤解し、警戒が薄い子が多い」と指摘する。
兵庫県立大の竹内和雄准教授(生徒指導論)は3年前から大学生を小中学校に出向かせ、スマホに依存し過ぎないよう使い方を教えている。竹内准教授は「同様の活動は全国にも広がりつつある」と語る。各地で出前授業をした同県立大4年の奥野朝陽さん(23)は「自分の失敗も伝えられ、打ち解けるのも早い」と話した。
兵庫県は今月16日から瀬戸内海の島に小中高生約20人を集め、4泊5日の「スマホ断ち合宿」を実施する。奥野さんら大学生が指導役だ。奥野さんは「じっくり本音を聞き、上手な使い方を一緒に考えたい」と話す。【米山淳、安高晋】