先日,航空自衛隊 一般幹部候補生 飛行要員の3次試験を受けてきました.実際に飛行機を操縦しての適性試験という珍しい体験をしたので,試験のざっくりとしたことを書きます.
自衛隊の試験を受けることを検討している方は,これを読むより先に地元の自衛隊地方協力本部の方にお話を聞いてください.
実際に受ける可能性が出ている方,あるいは単に興味を持っている方を対象として書いたつもりです.
そもそもなぜ受けたのか
もともと自衛隊に興味があったとか,パイロット志望だったとか,そういったことは全くありません.
受験のきっかけは,大学に自衛隊の広報官の方がいらっしゃっていたことです.情報セキュリティの分野で就職先を探していたんですが,自衛隊出身の方にその分野で活躍されている方がちょくちょくいらっしゃったことを思い出して,興味を持つようになりました.
その後,飛行要員とそれ以外の受験を併願できることや,パイロットが飛べなくなった場合には希望の分野に行きやすいということを聞き,飛行要員も受けようかとなりました.
航空自衛隊 一般幹部候補生 飛行要員とは
幹部自衛官の中でも,航空自衛隊のパイロット候補を採用する区分です.
一般幹部候補生の場合,院卒と大卒で分かれており,さらにそれぞれ一般要員と飛行要員に分かれます.その計4つの区分を,3つまで併願が可能です.
3次試験までの道程
細かい内容はうろ覚えなので,間違っていたらすみません.
1次試験
各県にある自衛隊で受験します.
筆記試験,飛行適性検査があります.筆記試験1日+飛行適性試験が半日です.
筆記試験は5教科(マーク)+自分の専攻(記述)です.内容については正直それほど難しいものではありません.
飛行適性検査は,航空機からみた風景写真から,その飛行機の体勢などを選択肢から選ぶといった問題が出されます.
2次試験
面接,作文,健康診断でした.1日で朝から夕方まで行われます.
面接は3:1の個人面接で,30分程度でした.志望理由の他に集団生活は大丈夫かとか人をまとめた経験について聞かれました.
健康診断は,視野とか今まで計測したことのない物もあって面白かったです.
待ち時間が数時間あったので,暇つぶし出来るようなものが必要です.
3次試験の日程
日程は5~8日間かけて行われます.日数にばらつきがある理由は,天候によっては飛行検査が実施出来ないためです.
1日目
昼ごろに航空自衛隊の飛行場に集められます.
- 試験の概要説明
- 飛行服や靴の配布
- 面接の準備
2日目
- 飛行検査 前準備
3~8日目
- 飛行検査
- 医学検査
- 面接
試験の概要
試験では大体以下の内容があります.
- 飛行検査
- 医学検査
- 面接
試験の内容を順に説明します.
飛行検査
試験のメイン(と私が勝手に思ってる)です.実際に飛行機に乗って,操縦を行います.
使う飛行機はT7という二人乗りのもので,練習機といわれる種類のものだそうです.
4回飛行して適性を見る試験になります.
左右への旋回や,水平からの下降,上昇からの水平などが課題として出されます.
飛行の適正って何?
具体的な評価基準は不明です.
ただ水平線を基準として,機体の状態(機首の上下,左右の傾きなど)を水平線などの景色で把握するようにとはよく言われました. 自分は外を見ようと意識してても,つい計器を凝視してしまってました.
教官がおっしゃるには.計器はあくまで確認のために使うので,一瞬だけ見てその残像で判断するそうです.
飛行検査 前準備
操縦の仕方や試験の内容について,DVDや,教官の方がスライトを使って説明されます.また操縦の仕方を書かれた冊子が渡されますので,それを読んで勉強します.
また操縦席の実寸台の模型があり,それを使って操縦桿を動かして練習することが出来ます.
医学検査
脳波,心電図,色覚,網膜,問診くらいだったと思います.
個人的には脳波が鬼門です.薄暗い部屋で横になって,目を閉じて20分弱そのままいるというものでした.
この検査の何が辛いって,寝てはいけないことです(もし寝た場合はやり直し).飛行試験の隙間に医学検査は差し込まれるので,人によっては飛行して疲れて昼食を取った後,脳波検査という流れになります.
脳波を取る方が寝そうになったら声をかけてくれて(脳波みたら寝そうかどうか判るらしい),どうにか1回で取れました.
面接
2:1の個人面接で30分程度行われました.若い幹部自衛官の方もいて,ラフな感じの面接でした.
自衛隊の志望度とか,パイロットを志望した理由とか聞かれました.
面接 前準備
面接の材料として(?),以下の2つを作成しました.
プロフィールシートのようなものの作成
プロフィールシートでは,小学校から現在までの学校,そこでの活動(部活,委員会など),そのころ努力していたことなどについてでした. その他,履歴書にあるような項目についても聞かれました.
単語に続けて,文章を作るもの(十数程度)
数十字程度の短い文章を書きます.十数問あったと思いますが,1問1分強くらいの時間しか与えられません.
面接で,書いた内容について「こういった文章を書いてるけど,こういう考え方をするの?」というような性格を見るような感じで使っていました.
営内の環境
飛行学校から出られません.また学校内の自由な行動は出来ず,移動の際は常に自衛官の方が付き添います.ただ不定期に売店に立ち寄ったりもさせていただけるため,それほど不便はありません.
洗濯機や乾燥機は無料で使えますが,台数は少なかったので必ず使えるとは限りません.下着などの着替えは数日分あったほうがいいと思います.
お風呂は大浴場でサウナもありました.シャンブーなどは無いので,各自で持っていく必要があります.
土日は7時起床,平日は6時起床です.いつも10時過ぎに起きている人間には辛いです.各部屋にエアコンがあり動いていますが,消灯後は止まります(うわさでは,試験があるからエアコンを動かしているが,通常今の時期はつかないとか).扇風機もありました.
受験して
飛行機は暑いと聞いていましたが,飛んでいる時は飛行機のエアコンも動くためそれほどでもありませんでした.ただエンジンを動かすまではエアコンが動かないので,地上では暑かったです.あとパラシュートとか非常用の装具が全部で20kg以上あって非常に重い.今回乗ったT7という練習機は射出式のシートでは無いため,非常時に脱出する際は自力で操縦席から出て,翼に移動して飛び降りてもらいますって言われて真顔になった.いままでそうなった例は無いそうですが.
飛行機の操縦自体は,丁寧に教えていただけたり学習の時間を十分にとられていたため,思ってたよりもどうにかなりました.
場合によっては検査の待ち時間が長くなるので,本とか持って行っててもいいかもしれません.
飛行検査が全て終わってから,各自のスマホとかカメラを使って飛行機の前とかで写真を取ってくれました.デジカメを持って行っておけば良かった(´・ω・`).飛行機の乗り降りなどを手伝ってくださる方にカメラなどを預けることになるので,カメラを持っていく場合はポケットに入るサイズで.
感想
一言でいうと,貴重な体験が出来たので受験して正解でした.
自分の普段いる環境とは全く違った体験だったため,とても面白かったです.厳しい規律や上下関係といったものは大学生活やアキュトラスでは無縁のため,違う世界を見ることが出来ました.チャイム代わりのラッパがなった時,それまで座って話をされていた自衛官の方々が,急に立ち上がり国旗のある方角を向いて直立されていたのが印象的です.
飛行試験はとにかく楽しかったです.旅客機に乗ったことはありますが,今回の飛行機は小さく旋回するので雲の立体感(?)が凄い感じれます.飛行試験が終わってから,アクロバット飛行も少しやっていただき,内臓が引っ張られる感覚も初めて体感しました.
あと飛行要員の試験受験者ですが,飛行機マニアの方が多かったです.あとは民間のパイロットも併願してますとか,大学でグライダーに乗っていますとか.そのため他の人よりは飛行機大好き感が少なく,面接では少し珍しがられた感じがします.
自衛隊の試験内容についても,体力測定などが無かったり,実際に飛行しての適性検査をするといった点で驚きました. ただ体力測定が無いとしても,自分がお見かけした方はみなさん引き締まった体をされていたので,必然的に体は鍛えられるんだというのを目の当たりにしました.
営内で数日過ごさせていただいたことで,自衛隊の学校の雰囲気も少し見ることが出来ました.私が自衛隊の方に知り合いがいないため,現場を見て雰囲気を知ることが出来たという意味でもこの試験は良かったと思います.
今回の営内での雰囲気や現役自衛官の方からお話を伺ったことをまとめると,自衛官に向いている人は,ある程度の理不尽さに耐えれて,飲み会で盛り上がれて,つらい状況でも仲間がいれば大丈夫という人のようです.
逆に苦手な人は,集団生活が苦手で自分のペースを大切にする人という感じでしょうか.(違ってたらすみません)
国を守るって大変だなというのを実感した試験でした.
もし合格すれば,4月から候補生として幹部候補生学校に行った後,航空学校に行くことになります.飛行要員として学校を卒業できるのは2割ほどだそうです.あとは適性なしとして,通常の幹部になるとか.厳しい世界ですね.
まとまりのない文章になりましたが,とりあえず思いつくまま書きました.
お世話になった自衛官の皆様,ありがとうございました.