読んだ本
・ジョン・ファンテ「デイゴ・レッド」
塵に訊け!に続く2冊目の邦訳。この作家が再評価されていて作品が読めるのはありがたい。本作は1940年発表の短篇集。作家の少年時代―イタリア移民2世として当時味わった屈辱、そのことによる自己否定、カトリック教との関係、横暴な父親と家族…といった主題にほぼ貫かれている。といってもこの作家の魅力は、こういった重苦しいテーマにも常に漂うユーモアやアイロニーの感覚で、この作品にもそれは如実に発揮されていて、すごくいい作品だった。
・ドノソ「別荘」
よくぞこの本を入荷してくれた。図書館グッジョブな一冊。
歴史的傑作「夜のみだらな鳥」の8年後に発表された作品。別荘に残された33人の子供たちの異常な世界。分厚い本だったけどおもしろくてすぐに読み終わった。みだらな鳥と比べると文体はごく一般的で、みだらな鳥のあの狂気に引き込まれていくような凄みはないが、逆に狂乱の模様を冷静に記しているような冷ややかな異常性を保っている。ただメタの要素は必要だったのかは疑問。夜のみだらな鳥を書いてしまったドノソが次作へのプレッシャーに負けてしまった表われのようにも思える。とはいえとにかくおもしろかった。残虐で突飛で全員40度の熱に浮かされてるようなシュルレアリスティックな悪夢。傑作。
・ロベルト・ボラーニョ「野生の探偵たち」
初めて読む作家。結構評判がいいみたいなので期待して読んでみたが…うーん、退屈。若い詩人たちによる芸術運動グループのあれこれという全く興味のない主題だったからかな…と思っておきたいところだが。。。
・イェンゼン「グラディーヴァ」
・フロイト「妄想と夢」
1903年に出た小説と、フロイトによるその作品の分析の合本。
「グラディーヴァ」という小説は、男の妄想じみた言動となぜかそれに乗っかるまわりの人たちという、カフカあるいはドストエフスキーなんかにも共通するような滑稽さを持ったなかなかの佳作。
小説内に夢を見る場面が多く出てくるのだけど、それを分析したのがフロイトのもの。フロイトの何が好きって、二次創作の天才とでもいうか、人間でも小説でも全部自分の色に染めて好き勝手やってるとこで、もうおれはフロイト読むとおもしろくって笑えてしょうがないんだが、今回はあんまりぶっ飛んでなかったな。意外とまともな分析に終始していてちょっと残念。
・オネッティ「井戸」「ハコボと他者」
オネッティの短編を二つ。「ハコボと他者」はヘミングウェイもこんなん書いてなかったっけ?というよくあるっちゃあよくある作品。「井戸」は素晴らしい。何かにとり憑かれたような男の内的独白。自分に向かって喋り続ける男がそれ自体すでに滑稽さの断罪を受けているという形式は、やはりたまらなく好きだ。
・ロベルト・ボラーニョ「2666」
野生の探偵たちのあと短篇集を2冊位読んだけど全然おもしろくなくて、なんでこんな作家が人気なんだろ?と思ってたんだが、このクッソ長い遺作はおもしろかった。5つの独立した部が読んでいくほど絡み合い、繋がったように見えては線が消え、またどこかで繋がっていく、めくるめく世界。完成形が見たかったけど、最後の最後でなんとなく円環が見えてくるので未完の作品における消化不良もそこまでない。
5つの部それぞれで文体や読ませ方を変えているのをみると、器用な作家だったんだろうなと思う。マルケスと同じで、その辺がおもしろいけどこの作家にどっぷりは浸かれない理由でもあるのかな。おれはラテンアメリカの荒削りな狂気が好きなんだろう。もっともマルケスはそれでもラテンアメリカの風土が色濃く感じられて惹き込まれるのだけれど、この本はラテンアメリカの本というより欧米の実験小説的な趣が強いと思う。とはいえ非常におもしろかった。
塵に訊け!に続く2冊目の邦訳。この作家が再評価されていて作品が読めるのはありがたい。本作は1940年発表の短篇集。作家の少年時代―イタリア移民2世として当時味わった屈辱、そのことによる自己否定、カトリック教との関係、横暴な父親と家族…といった主題にほぼ貫かれている。といってもこの作家の魅力は、こういった重苦しいテーマにも常に漂うユーモアやアイロニーの感覚で、この作品にもそれは如実に発揮されていて、すごくいい作品だった。
・ドノソ「別荘」
よくぞこの本を入荷してくれた。図書館グッジョブな一冊。
歴史的傑作「夜のみだらな鳥」の8年後に発表された作品。別荘に残された33人の子供たちの異常な世界。分厚い本だったけどおもしろくてすぐに読み終わった。みだらな鳥と比べると文体はごく一般的で、みだらな鳥のあの狂気に引き込まれていくような凄みはないが、逆に狂乱の模様を冷静に記しているような冷ややかな異常性を保っている。ただメタの要素は必要だったのかは疑問。夜のみだらな鳥を書いてしまったドノソが次作へのプレッシャーに負けてしまった表われのようにも思える。とはいえとにかくおもしろかった。残虐で突飛で全員40度の熱に浮かされてるようなシュルレアリスティックな悪夢。傑作。
・ロベルト・ボラーニョ「野生の探偵たち」
初めて読む作家。結構評判がいいみたいなので期待して読んでみたが…うーん、退屈。若い詩人たちによる芸術運動グループのあれこれという全く興味のない主題だったからかな…と思っておきたいところだが。。。
・イェンゼン「グラディーヴァ」
・フロイト「妄想と夢」
1903年に出た小説と、フロイトによるその作品の分析の合本。
「グラディーヴァ」という小説は、男の妄想じみた言動となぜかそれに乗っかるまわりの人たちという、カフカあるいはドストエフスキーなんかにも共通するような滑稽さを持ったなかなかの佳作。
小説内に夢を見る場面が多く出てくるのだけど、それを分析したのがフロイトのもの。フロイトの何が好きって、二次創作の天才とでもいうか、人間でも小説でも全部自分の色に染めて好き勝手やってるとこで、もうおれはフロイト読むとおもしろくって笑えてしょうがないんだが、今回はあんまりぶっ飛んでなかったな。意外とまともな分析に終始していてちょっと残念。
・オネッティ「井戸」「ハコボと他者」
オネッティの短編を二つ。「ハコボと他者」はヘミングウェイもこんなん書いてなかったっけ?というよくあるっちゃあよくある作品。「井戸」は素晴らしい。何かにとり憑かれたような男の内的独白。自分に向かって喋り続ける男がそれ自体すでに滑稽さの断罪を受けているという形式は、やはりたまらなく好きだ。
・ロベルト・ボラーニョ「2666」
野生の探偵たちのあと短篇集を2冊位読んだけど全然おもしろくなくて、なんでこんな作家が人気なんだろ?と思ってたんだが、このクッソ長い遺作はおもしろかった。5つの独立した部が読んでいくほど絡み合い、繋がったように見えては線が消え、またどこかで繋がっていく、めくるめく世界。完成形が見たかったけど、最後の最後でなんとなく円環が見えてくるので未完の作品における消化不良もそこまでない。
5つの部それぞれで文体や読ませ方を変えているのをみると、器用な作家だったんだろうなと思う。マルケスと同じで、その辺がおもしろいけどこの作家にどっぷりは浸かれない理由でもあるのかな。おれはラテンアメリカの荒削りな狂気が好きなんだろう。もっともマルケスはそれでもラテンアメリカの風土が色濃く感じられて惹き込まれるのだけれど、この本はラテンアメリカの本というより欧米の実験小説的な趣が強いと思う。とはいえ非常におもしろかった。
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