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【「日本人の誇り」育てたい(2)】
人生は砂時計 教育評論家・中塩秀樹さん
それでも、地域の方がコーチを引き受けてくれるなどの支援もあり3年目に悲願の初勝利。勢いに乗って地区大会、ブロック大会も優勝と快進撃を続け、県大会でも3位にこぎつけました。このとき、メンバーの1人が泣きながら表彰状を受け取ったのです。苦しい家庭環境の中で育った子で、「私みたいな者でも努力したら報われることがあるんですね」と言った言葉が今でも忘れられません。
ただ、その頃の私は「日本一苦しい練習をするチームが日本一になる」と考えていました。しかし、それは間違いだということを教わりました。
全国大会の優勝経験を持つ監督から、偶然出会った大会会場で「県大会で優勝するには、個々の特性に応じた練習内容を考えて指導すること。一律に練習量を増やしても故障者が増えるだけ」「さらに強くなるには、ソフトボールの練習だけではなく、心技体を磨くこと」と言われたのです。
それまで続けていた平日の朝練習をすぐにやめ、学校近くのアパートや道路の清掃を始めました。日曜はこの清掃と勉強をしてから練習に入りました。そうするうち、道に迷って泣いている子を家まで連れて行ったりする生徒も出てきて、近所の人から褒められたり差し入れをくださったりするようになりました。評価が高まるにつれ、辞める子がなくなりました。