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【「日本人の誇り」育てたい(1)】
多くの恩恵受けて生かされる 教育評論家・中塩秀樹さん
貧しくて参考書も買ってもらえないので、最初は教科によって成績に偏りがあり、苦手科目は宿題しかしませんでした。その一方、得意な数学は自分の教科書だけではもの足りず、姉の教科書をもらって独学。中学1年の3学期には、3年の数学の教科書をほぼ勉強し終えていました。
子供が夜中まで外にいては危ないと思われるかもしれませんが、目の前が派出所だったので治安は抜群でした。しかし、いったん事件が起こると派出所が騒がしくなるので、勉強するには大変でした。でも、警察官が市民の生活を24時間、どんなに苦労して守っていただいているかを、毎日、目の前で見ることができたのです。そのため、自分が多くの方から恩恵を受けて生かされていることを自然に感謝できるようになり、「私も世の中のためになる人間にならないといけない」と考えるようになっていました。
そんな「志」を持って、やがてさまざまな勉強方法を考え出し、試しながら、独学で楽しく、効率的に勉強することができました。そのおかげで、高校、大学、大学院とそれぞれ第一志望にストレートで進むことができたのです。
大学院に入ったとき、幼い時に見た幕末の志士、高杉晋作のテレビ番組をふと思い出し、車で山口県萩市にある高杉晋作の生家に行きました。晋作が夜こっそり松下村塾へ通っていたように、晋作の生家から1時間かけて松下村塾まで歩いていると、松陰神社の前で不思議な体験をしました。「(吉田)松陰先生に会いなさい」と2度はっきり聞こえたのです。