HYDEが語るライヴ、ソーシャルメディア、テクノロジー、音楽ビジネスの今

2016.08.12 12:00

音楽とファンとのつながりが変わってきている。CDで聞く時代からライヴやソーシャルメディアで、ミュージシャンとつながる時代へと変化している。ミュージシャンキャリア22年、VAMPSとして精力的に国内外のライヴを行うHYDEに時代の変化と現代のミュージシャンに必要なことは何か?を伺った。

☆HYDE登場!「風とロックとHulu」もあわせてチェックして欲しい。

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"楽器屋も健在で、ライヴも人気ってことは音楽はまだ死んでない"と語るHYDE

■"音楽は死んでない" / 対応力が求められる時代

--現在「ライヴの価値」が今まで以上に高まっていると思います。国内外でライヴ活動を行うHYDEさんから見て、音楽と人間との関わりはどのように変わってきていると思いますか?

HYDE:
そうですね、CDが売れない時代になっている。顕著な例として、アメリカの大都市では何年も前からCDショップを街中で全く見かけなくなってしまって。 CDを買おうと思っても店頭で買えないという状況なんですよね。 ただそんなアメリカの都市でも楽器屋はあるんですよ。そこにはミュージシャンの新作CDが3,4種類ちょこっとおいてはありますが。
楽器屋も健在で、ライヴも人気ってことは音楽はまだ死んでないんですよ。 ただ、ダウンロードで聞く時代になって"CDで聞く"行為が死んでいる。
国民性だと思うけど、日本の都市に、まだCDショップがあるのが奇跡的だと思う。

--VAMPSおよびHYDEさんが積極的にライヴを行うのはそのような時代の流れを読んでいるからでしょうか?

HYDE:
時代の流れを読むというよりは、「状況に対応している」と言った方がいいかもしれないです。 時代に対応できないと消えていくのはしょうがないと思うし。

--消えていくのはしょうがない・・

HYDE:
これは音楽だけの話ではないですよね。タバコ屋から企業まですべてにあてはまる話で。 残念なことに時代が変わって商売が成り立たなくて怒っている人とかもいるけど、むしろ時代が変わるのは当たり前で、怒っていても誰も面倒見てくれない。 対応できない、ということは衰退していくしかないんじゃないかなと思います。

--対応力が求められる時代なんですね。

HYDE:
僕らのVAMPSというバンドは対応力があってフットワークが軽いので、いろんな形のライヴが可能だと思っています。ダウンロードで音楽が聞けたり、YouTubeなどでも無償で音楽が聞けたりする時代だからこそ、「ライヴ」のチカラが発揮されると思っています。

■大切なのはミュージシャン自身が表現しながら楽しむこと

--VAMPSはライヴの形式もユニークですよね。10日間連続ZEPPでライヴを行ったりして。一箇所に留まり10日間連続ライヴをするバンドってVAMPSが初めてなのではないですか?

HYDE:
そうかもしれないですね。僕らはロックバンドをやっているけど、この「ロック」って定義があるようで無いんです。 「ロックはこうあるべきだ」って縛ること自体がロックではない。ロックって様々な可能性を秘めていて自由なんです。
ロックって派手にギターを弾くものから、静かに弾き語りするUnpluggedみたいな形式もあるので、いろんな可能性を秘めているんですよね。

だからロックを僕たち自身が自由に表現しながら楽しんでいる姿を見せることが、ファンにとっても楽しいんじゃないかな?って思っています。

■ファンは恋人 / 駆け引きや焦らしも楽しむ

--音楽の価値が「ライヴ」にシフトし、そして、ロックミュージシャンが楽しんでいる姿をダイレクトに感じられるところも「ライヴ」が盛り上がっている理由なのですね。ファンとダイレクトに繋がるという意味ではソーシャルメディアの利用も重要な時代だと思います。HYDEさんのInstagramのいいね!の数が毎回多くて凄いですが、 どのようなことを気にされてソーシャルメディアを利用されていますか?

HYDE:
僕たちは海外でも活動しているのでソーシャルメディアは海外のファンに対しての情報発信ツールとしてをメインに活用しています。海外でプロモーションするのって巨額な費用がかかるからね。海外のミュージシャンにとってはInstagramなどソーシャルメディアを活用しないのは考えられないってぐらいなんですよ。実は最初はそれほどチカラを入れてなかったんだけど、海外に頻繁に行くようになってから、ソーシャルメディアを使わない手はない、と感じて、積極的に利用するようになっています。 だから、僕のソーシャルメディアは日本語と英語を併用してファンとコミュニケーションをとっています。

日本のファンとのコミュニケーションで僕が楽しんでいるのは"駆け引き"。 気軽に情報アップできるソーシャルメディアで、どれくらい情報出そうか?という駆け引きを楽しんでいます。

ソーシャルメディア越しのファンは恋人みたいなものなので、たくさん情報を出した後は、ちょっと焦らしたりするぐらいが面白いですよね(笑)。

--ファンとのコミュニケーションの楽しみ方が素敵です。
HYDEさんのInstagramは写真あり、イラストあり、ライヴの熱狂があり、ひとつのギャラリーを楽しむような気持ちにさせてくれます。 最後の質問ですが、HYDEさんにとってテクノロジーとはなんでしょうか?

HYDE:
曲作りにおいてテクノロジーが役立つシーンが増えて来ていると思います。いろんな方向性で音楽が作れるようになってきていて、いままで作れなかった音が作れるようになってきている。 そして、ビデオカセットからDVDに変わった時にもう旧世代のビデオカセットのクオリティには戻れないと感じたように、今ではハイレゾ音源を聞くともう元の音は聞けなくなったり。 そういう意味ではどんどんテクノロジーが進化し、音楽シーンも変化はしていくんだろうね。

同時に、アナログレコードが流行ったりするじゃないですか? 面白いですよね、 ハイレゾもあればアナログもある時代なんですよね。 レコード会社はどこへ向かえばいいのかわかりませんよね?(笑)。 だから、この先何があるかわからないので、フットワークを軽くして、今求められているものに対して、うまく対応し、アプローチしていくのが大事なんでしょうね。 世間の様々な新しい変化に対して「こんなのダメだよ」とか言っている時点で、乗り遅れてしまっているんだと思う。

僕らは自分たち自身がロックを自由に楽しみながら様々な変化に対応していき、その姿をライヴやソーシャルメディアを通じて見せることで、ファンと一緒に時代を楽しんで行きたいと思っています。

--HYDEさんに言われるとものすごく説得力があります。ありがとうございました!

取材は「風とロックとHulu」の収録終了後の夜11:00、「渋谷のラジオ」があるスタジオで行われた。一本収録を終えた直後の遅い時間にも関わらず、HYDEはひとつひとつの言葉を真剣に選び上記インタビューに応えてくれた。 時代の変化も、テクノロジーの進化も楽しみながら柔軟に対応しているHYDEおよびVAMPSの様子が言葉の端々から感じられた。ミュージシャンとしての尊敬はもちろん、この複雑化した時代を生きる人間のひとりとして今後の活動も追っていきたいと考えている。

関連情報:
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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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