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【社説】

緊張高める中国 力や金で得られぬもの

 東シナ海で中国の挑発行動が緊張を高めている。南シナ海進出では仲裁裁判所が法的根拠なしと判決を下したばかりである。大国になろうとも力や金では得られないものは何か、よく考えてほしい。

 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海や接続水域に、武器を搭載した中国海警局公船や二百三十隻以上の中国漁船が入る事態が続いている。

 日本は外務省だけでなく外相レベルで「緊張を高める一方的な行動」と抗議した。尖閣を自国の領土だとする中国の一方的な主張を既成事実化させないよう、断固たる姿勢を貫いてほしい。

 尖閣で中国の強引な姿勢が目立つ背景には、南シナ海紛争で仲裁裁判所の判決を受け入れるよう求めた日本への反発もあるようだ。

 だが、これは全く筋違いであろう。海の平和を守るための国際司法の判断を紛争当事国の中国が尊重すべきなのは当然である。

 判決で苦境に立たされた中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議の共同声明で判決に言及しないよう、経済援助などを通じて関係の深いカンボジアなどに外交攻勢をかけた。

 全会一致の原則から共同声明は判決に言及しなかったが、「国際法に従って平和的に紛争を解決する必要性」を確認した。

 だが、判決を「無視する」と公言する中国は、南シナ海だけでなく東シナ海でも挑発行動をエスカレートさせた。最近の中国は、大国の力と金を武器に一方的な海洋進出を正当化する行動が目立つと批判されても仕方がない。

 そのふるまいには、国際秩序を支える「法の支配」を尊重する謙虚さが感じられない。驚くべきことに、中国最高人民法院(最高裁)は「中国が管轄する」と唱える南、東シナ海の海域で「国内法を適用する」との新主張を始めた。

 自国が常に正しいとの主張を前提に強引に物事を進める独善的な大国主義こそ、国際社会で中国が真の信頼を勝ち得ない大きな理由の一つであろう。

 中国に打撃だった判決だが、国際社会と向き合う姿勢も引き出した。中国はASEAN関連会議で南シナ海での「行動規範」策定について「来年上半期までに枠組み協議を完了する」と初提案した。

 中国はこれまで「行動規範」自体には賛成しながら、自国に有利な当事国同士の交渉を優先させてきた。平和な海を実現する国際秩序に、中国が前向きに参加する第一歩であるのなら歓迎したい。

 

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