わたしは炎天下の中を歩いていた。マトモじゃないDOG DAYS、今日もクソ暑い。頭のネジが吹っ飛んでイカれちまいそうだ。吹き出した汗がパンティーまでグッショリ濡らしちまう。
わたしは何かを蹴飛ばして立ち止まった。見下ろすと足元には見慣れない赤い果実が転がってる。小さな蟻が群がって腐って崩れた果実もあった。
ふと見上げると青葉の間から赤い果実が垂れ下がっていて、熟れて裂けたその赤い果実は繁殖期の雌狒狒ようにその恥部を淫靡に晒し夏の日差しを浴びていた。
わたしは落ちていた果実(腐っていない方)を手に取って、まだ新鮮で瑞々しい濡れている裂け目に両手の親指を潜り込ませ、力を込めて赤い果実を割いた。小さく弾けるような音をたてて固い外皮が裂け目を広げる。
剥き出しになった果実は生々しい臓物のように赤黒く妖しい艶を放っていた。そしてそれは、まるで卵巣に入ったまま塩漬けにされた鮭科の卵、筋子のようでもあった。
わたしは手元の赤い果実を目にして、口の中に筋子の血生臭さと塩気を感じ、不快な唾を飲み込みこんだ。
そのグロテスクな赤い果実は柘榴、
そして、これが筋子である。
これが柘榴で
これが筋子
柘榴で
筋子
これはイクラ
柘榴
筋子
柘榴
柘榴
筋子
目を開けると見慣れた天井が見え、眠っていたことに気付いた。今日はとても暑い日だった。仕事から帰りダラダラしているうちに眠ってしまったらしい。
わたしは空腹感をおぼえ、キッチンへ向かい冷凍庫からラップに包まれた凍らせた白米を取り出してレンジで温めた。お気に入り茶碗に温めた白飯をコロンとよそい、冷蔵庫から青い蓋のタッパーに入った冷えた柘榴を取り出して箸と一緒に食卓へ運んだ。今日のオカズはこれだけだった。
テレビを点けニュース番組を観ながら一人きりの食事を始める。冷えた柘榴を温めた白飯に乗せ、ゴクリと唾を飲み込み、箸で掬って舌の上へ置く。奥歯で咀嚼すると柘榴がプチプチと弾けて果汁が飛び出した。白米と果汁と種が三位一体となってわたしの舌の上へ広がる。美味かった。弾けた果汁からは大海原から還ってきた濃縮された旨味が感じられ、程良く効かせた塩気が白米に絡み容赦なく食欲を掻き立てる。わたしは冷凍庫に凍らせてある白米をもう一つ温めようかと思案した。それくらい美味かったのだ。
-あとがき-
クソして寝ます。