パラリンピック 露は責任の重さ自覚を
ドーピング(禁止薬物使用)違反の隠蔽(いんぺい)工作を国家主導で進めたロシアに対し、国際パラリンピック委員会(IPC)は国としての責任を問う厳罰を下した。
世界反ドーピング機関(WADA)の勧告を受け、IPCはロシア・パラリンピック委員会(RPC)を資格停止処分にした。これにより、9月7日開幕のパラリンピック・リオデジャネイロ大会にロシア選手は出場できなくなった。
同じ勧告を受けた国際オリンピック委員会(IOC)が不正への関与が疑われるロシア・オリンピック委員会(ROC)の責任を不問に付したのとは対照的な判断だ。IOCが参加可否の判断を各国際競技団体に委ねた結果、不信をぬぐい切れないまま、多くのロシア選手がリオ五輪に参加している。
「国全体の責任と選手個人の権利のバランスをとった」と説明したIOCのバッハ会長に対し、IPCのクレーブン会長は「これは個人の権利ではなく、国家の反ドーピングシステムが破壊された問題だ。ロシアのドーピング文化が変わらなければスポーツは健全性と信頼を失う」と述べた。ロシアにクリーンな選手がいる可能性を認めつつ、個人資格での参加も否定したのは、国としての責任を重くみたためだろう。
ロシアは前回ロンドン大会で中国に次ぐ36個の金メダルを獲得した強豪国だ。ロシアの不参加はリオ大会の競技レベルを下げ、商業的な価値を損なうかもしれない。だが、IPCはクリーンな選手とスポーツの公正、公平を守ることを優先させた。その判断を支持したい。
IPCの決定についてロシアは「我々の成功へのねたみや政治情勢が絡んでいるのだろう」と反発し、スポーツ仲裁裁判所に提訴する方針だ。ドーピング問題でロシアは組織的関与を否定し、個人の問題で片付けようとしている。責任の重さを自覚しない限り、国際的な信用は回復できず、孤立するだけだろう。
IPCは大会発展のため財政力豊かなIOCと協力関係を結び、2008年北京大会から組織委員会を一体化させた。競技スポーツ化が進行したことでプロ選手が登場し、スポンサーマネーが流れ込んできた。
メディアの露出が増え、パラリンピックも国力を誇示できる場になった。ロシアのようにドーピングに手を染める国が現れたことで、パラリンピックは重大な岐路に立っていると言える。
パラリンピックの魅力は、選手たちが障害を乗り越え、限界に挑戦する姿にある。見る人はそこに心を動かされ、拍手を送る。五輪の負の側面まで引き継いではならない。