北朝鮮がミサイルの発射を続けている。

 先週に予告なく撃った中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられる1発は、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。

 幸い被害はなかったが、見過ごすわけにはいかない危険極まりない行為である。

 北朝鮮の弾道ミサイルの発射は明確な国連安保理の決議違反だ。今回の発射の後、対応を協議してきた安保理だが、非難声明を出すことを断念した。

 日米韓は強い非難を求めた。これに対し、米韓が7月、高高度迎撃ミサイルシステムの在韓米軍への配備を決めたことに反発する中国が難色を示し、合意にいたらなかった。中国は、高性能レーダーによって自国まで探知できるようになると警戒している。

 北朝鮮は安保理の警告を無視しているとはいえ、国際社会は核もミサイルも決して容認しない意思を示す必要がある。

 にもかかわらず、米韓がシステム配備を発表して以降、ミサイル発射を続ける北朝鮮に、安保理が一度も非難声明を出せない現実は異常というしかない。

 習近平(シーチンピン)、朴槿恵(パククネ)政権の下で、一時は過去最良と言われた中韓の関係も大きく揺らいでいる。

 韓国人への商用ビザの発給が止まるなど、経済や文化の活動にも支障が出ている。韓国メディアは、中国による意趣返しではないかと報じている。

 中朝関係はまだぎくしゃくしているとはいえ、中国は今も北朝鮮の最大の後ろ盾だ。それだけに北朝鮮は中韓関係の停滞を好都合と考えているだろう。

 北朝鮮問題をめぐっては、中韓だけでなく、日米韓と中国・ロシアとの溝も広がっている。

 米韓にしてみれば、行動をエスカレートさせる北朝鮮への対抗措置をとらざるをえないが、中ロ側は、北朝鮮の振るまいを口実にした軍事力の強化と受け止めている。

 このまま、日米韓と中ロとの離反が進めば、北朝鮮の挑発行動をますます助長してしまう。北朝鮮の危険な行動が、結果的に東アジア全体を不安定化させる事態を許してはなるまい。

 ここは各国が冷静に行動する時だ。とりわけ中国が圧力をかけるべき相手は、北朝鮮であることを忘れてはならない。米韓にミサイル防衛の強化を余儀なくしているのは、金正恩(キムジョンウン)政権の予測困難な振るまいだ。

 米韓はこれまで以上に中ロとの対話の機会を求め、誤解の芽を摘みとるよう努めるべきだろう。関係国の足並みの乱れは、北朝鮮の思うつぼである。