海の泡になれないし、明日からもただ地味な生活が続いていく――
こんにちは、氷太よ。
今日は雪居ゆき先生/ARUKU先生の
『俺の人魚姫』
を頂いていくわね。
いや~・・・ほんっと良かったわ!
BL漫画って特定人物、特に主人公視点の描写が多くって中にはただの一人よがりでしたっていう物語も多いんだけど、この漫画はカップルになる2人の視点だけじゃなく、その2人を際出せるためのモブキャラの気持ちにも焦点を当てている漫画ってところね。
それによって物語の世界観の深さが増していて、尚且つそれぞれのキャラの違った形の片思いがどれも重さを持っている。
少なくとも今、片思いをしている人にとっては琴線に触れる漫画である事は間違いないわ。
あらすじ
中学を卒業して以来、近所の消しゴム工場で働く道雄。彼は吃音のコンプレックスがあり、友人も作れずに孤独な毎日を過ごしている。
唯一のあたたかい思い出は、昔、悠馬にいじめっ子から助けてもらったこと。
悠馬は良い学校を卒業し、今やタイヨー文具の若き常務となった。
工場に現れる悠馬を、道雄は時々遠くから見つめるだけ……。
しかし工場ではストが起き、爆発騒ぎにまで発展、その事故によって悠馬は視力を失ってしまう。悠馬のことが心配でいてもたってもいられない道雄は、そっと悠馬に花を届ける。
そんな「名無しの君」に悠馬は信頼を寄せ始めるが……。
こんな感じの物語ね。
設定からして、一昔前の物語なのかしら・・・?
と思ったけど近代的な部分もあるからそんな事はないみたいね。
物語序盤、戦後のお話かと思った自分が恥ずかしいわ・・・。
物語を構成する主な部分は主人公の自己犠牲的な性格と、僅かな過去の出来事によって生まれた一途な恋との間で起こる「ゆらぎ」。
笑いの要素は一切ないわ。
最初から最後まで、ずっとシリアスよ。
登場人物
杜松(表紙下)×受け
通称「ネズミ」、消しゴム製造のライン作業の仕事担当している。
吃音が酷く、人と上手くコミュニケーションが取れない。
自分を必要としている人間はいないと常に考えており、悠馬への片思いだけが生きていく事の支えとなっている。
悠馬(表紙上)×攻め
ネズミの働いている会社の御曹司にして常務。
尊大な態度と思われがちだが、小さい頃ネズミをいじめから助けたりするなど優しい一面を持ち合わせている。
とある事件により、失明寸前の危機に晒される事に・・・。
感想
この漫画の良い部分は葛藤が全て行動に繋がっている点。
考えるだけ考えて、結局は思い違いだったとか勘違いでしたとか何のページ数稼ぎだよっていう部分が存在しないのよね。
この思いを伝えるにはどうすればいいか?
この思いが伝える事のできないものなら他に何をしてあげられるのか?
常に自分自身と戦っている葛藤は同じかもしれないけども、そこにはあらゆる行動が伴っていて努力があるのよね。
長く連載し過ぎた少女漫画のように「お前どんだけ同じ事繰り返してんだよ」感が全くないわ。
この漫画本当に学ぶべき事が多い漫画だと思うわ。
アタシもね、いくつかの記事でもう何回も書いているけど元彼と別れてからずっとその元彼に片思いしているような状況なのね。
もう無事8年目を迎えましたコノヤロウ状態なの。
正直言って、このままこの想いを抱えていく事が正しいのか、自分が幸せになる道のりとして合っているのか不安になる事があるわ・・。
たまに会いに行ってるんだけど、そこでどうしようもなく傷つく事だってあるのよ。
でもそれでも相手は人間であって物じゃないの。
自分の思い通りになって欲しいっていうのはもはや片思いじゃないのよ。
傲慢なのよ。
片思いが正しい片思いであるためには、どんな感情であるべきか。
それがこの作品には詰まっていて、アタシはアタシのこの感情が決して間違ったものではなかったんだ・・と教えられた漫画だったわ。
この杜松の物陰から、自分の気持ちに蓋をして悠馬に寄せる献身的な恋心には涙がホロホロっと出てくる。
両思いじゃなきゃ幸せになれないわけじゃないわきっと。
片思いには、片思いの幸せがあるのよね。
そんでこの漫画同性・異性のライバルがそれぞれ出てくるわけね。
杜松にとっては異性の、悠馬にとっては同性のね。
物語中盤まではどっちもグウの音も出ない程の聖人で複雑な気持ちになっちゃったわね。
このライバル的存在によって生まれるスゲー高い壁をどうやって乗り越えるんだろう・・・とね。
だがしかし、さすがBLなだけある。
出てくる女が案の定クソ過ぎてホッとしたわww
だがしかし・・・。
この同性のライバルに関しては真逆なのよね~・・。
初めクソなんだけど、実は心底良い人なのよね。
いやほんとそう思えるくらいめちゃめちゃ良いやつなんだよなあ・・。
ぶっちゃけネズミとこの人がくっついたって異論生まれないくらいなのよ。
こういうサイドの部分も重厚で凄く良いのよね。
この2人の最後の部分・・・。
吃音で喋れず、最後の言葉も残せないネズミに対してのこの人の応対。
神かしらこの人・・・ちょっくら抱かれてくるわ。
アタシもアタシのこの先の未来が「終わり」だったとしても、せめてこういう暖かさを残せる人で居たいって本当にそう思えたわ。
まとめ
この物語ははっきり言って重いわね。
疲れている時とか、ストレス発散のための読書には向かないわ。
じっくりと、時間がある時に腰を据えて読んで欲しい漫画よ。
・・・片思いしている人は騙されたと思って読んでみなさい。
新しい見識に出会えると思うから・・・。
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