「国益に反する」豪が中国企業の電力権益取得認めず

「国益に反する」豪が中国企業の電力権益取得認めず
オーストラリア政府は、中国からの投資に対する警戒感が高まる中、最大都市シドニーなどを管轄する電力公社の権益の取得に中国企業が意欲を示していることについて、「安全保障上の観点から国益に反する」として認めない立場を表明しました。
シドニーがあるニューサウスウェールズ州の電力公社、オースグリッドは、権益の50.4%を売却する計画で、中国で送電などを手がける国家電網公司と香港のインフラ関連企業が入札に参加する意向を示しています。
オーストラリアでは一定額を超える外国投資は政府の承認が必要で、モリソン財務相は11日、オースグリッドについて「安全保障上の観点から今回の投資は国益に反する」として、中国企業による権益取得を認めない立場を表明しました。
オーストラリアでは去年、アメリカ海兵隊が駐留する基地に近い北部ダーウィンの港の一部を中国企業に貸し出す契約が交わされたのをきっかけに、中国のインフラ投資に対する警戒感が高まっています。
今回の決定はこうした世論を反映したものとなりましたが、経済界からは、中国からの投資を厳しく制限することは他の国からの投資の呼び込みに悪影響を与えるという懸念も出ています。

中国の豪への投資は増加 警戒感も

シドニー大学などのまとめによりますと、去年1年間に決定した中国のオーストラリアに対する投資は、日本円にして1兆1250億円余りと、前の年と比べて30%以上増加しています。
しかし、オーストラリア国内では、去年、北部ダーウィンの港の一部を99年間にわたり使用する権利を地元政府と契約した中国企業が、中国の人民解放軍とつながりがあると指摘されたのをきっかけに、中国のインフラ投資に対する警戒感が高まりました。
ことしに入ってからは、中国企業を中心とする企業連合が7万平方キロメートル以上に及ぶ国内最大規模の牧場を所有する企業を買収する計画がありましたが、オーストラリア政府は「国益に反する」として契約を承認しませんでした。
11日の決定について、中国情勢が専門のシドニー工科大学のジェームス・ローレンスソン教授は「中国からの投資がなくなると、シドニーなどで進められているインフラ整備や再開発などが今後、停滞するおそれがあり、オーストラリア経済にとってマイナスとなるだろう」と話しています。