【リオデジャネイロ=山口大介】リオデジャネイロ五輪の体操男子個人総合決勝は10日行われ、ロンドン五輪覇者の内村航平(コナミスポーツ)が6種目合計92.365点で連覇をなし遂げた。男子個人総合の五輪連覇は1968年メキシコ大会、72年ミュンヘン大会を制した加藤沢男以来、4人目の快挙となる。
最終種目の鉄棒。自らの演技を15.800点の高得点で締めくくった内村は試合場に背中を向け、金メダルを争っていたオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)の演技を見ようとしなかった。「見ないと決めていました。あとは運に任せたという感じで」
■団体決勝から中1日、疲労はピーク
5種目を終えてベルニャエフを0.901点差で追う苦しい展開だった。自らの鉄棒の演技には満足できたが、勝利の手応えはなかった。「展開的に負けたかなと思っていた。でも、これで負けても悔いはないという感じでオレグの点数を待っていた」。ベルニャエフの点数が14.900なら五輪連覇の夢は断たれる。しばしのときを経て場内スクリーンに表示された数字は「14.800」。その瞬間、内村はガッツポーズで喜びを爆発させた。
団体決勝から中1日。予選、決勝と全6種目を演技してきた27歳の疲労はピークに達していた。加えて悲願の団体金メダルを手にし、精神的にも難しい状況でこの日を迎えた。「団体に懸けてきた分、燃え尽きそうになっていた。それでも頑張って頑張って気持ちで持ちこたえた。今日は1種目も1秒も気持ちを切らさなかった」
最初の床運動は15.766点の好スタート。しかし、表情は疲労を感じているせいか、硬いままだ。続くあん馬は14.900点、3種目めのつり輪は14.733点。前半の3種目を終えて順位は3位。この時点でトップに立ったのが予選で内村を抑えて1位だったベルニャエフだった。
■跳馬では大技「リ・シャオペン」を
ウクライナ・ドネツク出身の22歳。内戦の混乱で劣悪な競技環境を強いられながら、ここ数年、世界トップクラスの実力をキープしている強豪だ。美しい体操で世界をリードしてきた内村に対抗すべく、演技価値点(Dスコア)を高めてきた。前半3種目で15点台を並べて内村に重圧をかけた。
4種目めの跳馬。内村は大技「リ・シャオペン」を跳んで15.566点の高得点。15.500点だったベルニャエフとの差をわずかながら縮める。だが、続く平行棒はベルニャエフが圧巻の演技を見せて16.100点。「あの演技を見せられて少し力んでしまった」という内村は15.600点にとどまり、その差は0.901点に広がった。
そして迎えた最終種目の鉄棒。演技構成のDスコアでは内村が7.1でベルニャエフの6.5を上回る。だが、ミスをすれば逆転は難しい。プレッシャーのかかる状況で先に出番が来た内村が完璧な演技を見せた。屈身コバチ、カッシーナ、コールマンと手放し技を次々成功させ、最後の着地は「何も欲を出さずにいつも通りやることしか考えていなかった」。ぴたりと止めて締めくくった数分後、歓喜の瞬間が訪れた。