花咲徳栄・高橋昂也、夏の初失点&被安打10も11K完投
◆第98回全国高校野球選手権第4日 ▽1回戦 花咲徳栄6─1大曲工(10日・甲子園)
今秋ドラフト1位候補の花咲徳栄(埼玉)の最速152キロ左腕・高橋昂也(3年)が、大曲工(秋田)にソロを含む10安打を浴び、今夏地方大会からの連続無失点は40イニングでストップ。それでも、11奪三振1失点完投で初戦突破した。
たっぷり汗をかいた。3季連続の聖地で、勝って上がる初のお立ち台。高橋昂は「苦しい場面はあったけど、しっかり投げきることができてよかった」。苦心してつかんだ甲子園初完投勝利にボソボソと漏らした。
初回先頭に四球。「実戦から離れていたので、思うようにいかなかった」。3点リードの4回先頭には、初球の甘い直球を左翼席に運ばれた。埼玉大会を37回無失点、52奪三振で制した左腕にとって、今夏41イニング目で初失点。公式戦での失点は、今春センバツ初戦で6回6失点降板した、秀岳館戦の5回以来だった。
「気にせず、次の打者を打ち取ろうと思った」。しかし、7回にはフォークを手前に叩きつけて死球。女房役の野本真康は「初めて見た」と驚いた。埼玉大会の計2四死球を上回る3四死球。出場49校中、地方大会のチーム打率が最低の1割9分7厘だった大曲工打線に10安打を浴びた。
それでも、崩れない。相手の直球狙いを察して中盤から変化球を増やし、「打たせて取る投球を心がけた」と昂也。ソロの1失点のみに抑えた。巨人などのスピードガンでマークした最速149キロの直球にスライダー、フォークをちりばめ、11奪三振のうち、10個を空振りで仕留めた。巨人・山下スカウト部長は「本来のキレはないけど、三振を取る力はある」と再確認した。
「勝てる投手」に変身した。昨夏の準々決勝で救援したが、優勝した東海大相模(神奈川)にサヨナラ負け。同じ左腕の小笠原(現中日)を見て、「自分も勝てる投手になりたい」と誓った。岩井隆監督(46)は「スライダーとフォークはお前の方が勝っている。真っすぐの力がつけば、超えられるんじゃないか」と語りかけた。センバツの初戦敗退を乗り越え、最速は昨夏の小笠原と同じ152キロまでたどり着いた。
「高校BIG3」と並び称される履正社・寺島成輝、横浜・藤平尚真に対し、静かに闘志を燃やす。「刺激になっている。ライバルというより、チャレンジャー精神」。剛腕の劇場は、序章にすぎない。(山崎 智)