きょう11日は「山の日」として今年から祝日になった。

 お盆休みとつなげて数日間の縦走を、あるいはこれを機に初登山を計画している人もいるかもしれない。

 日本の山々は山容や四季の変化に富み、昨今は海外からの登山客にも人気だ。「山ガール」に代表される若い世代の関心も引きつけている。

 一方で、事故も増えた。警察庁がまとめた15年中の遭難事故は2508件。遭難者は3043人、死者・行方不明者は335人と、統計が残る1961年以降いずれも最多となった。遭難者の約半数、死者・行方不明者の約7割が60歳以上だ。

 ただ、若い世代も要注意だ。最近は、山岳会など仲間での登山ではなく単独行が増えている。ネット上で知り合った初対面同士というグループもあり、経験豊かなリーダーがいないまま、また互いの力量や体調がよくわからないまま無理を重ねた末の事故も目立ち始めた。

 山の危険というと険しい地形や天候悪化、滑りやすい場所などでの事故を連想しがちだが、関西大学の青山千彰教授が過去の事故例などを分析したところ、大半はなんでもない山道で起きているという。

 集中力のとぎれる時間帯に木の根にひっかかったり、動く石に足をかけてバランスを崩したり、「油断」が原因だという。事故が起きやすいポイントを知り、そこで注意を集中することが予防につながると指摘する。

 慶応大学の砂原秀樹教授らは登山行程を管理する「山ピコ」を開発した。登山口や山小屋に端末を置き、手持ちの交通ICカードをタッチしてもらうことで行動履歴を記録。いざというときの遭難場所を探しやすくする狙いだ。

 長野県と協力し、今夏から北アルプス域で導入した。将来は体調管理や、個人差にあわせた危険箇所の警告などと組み合わせることも可能という。登山スタイルの変化に伴い、こうした新しい知識や技術も危険回避に役立てていくべきだろう。

 先人は、行き交う者同士で声をかけあう慣習を築いてきた。単なるマナーにとどまらない。声の出具合で自分の疲労度を測ると同時に、相手の記憶を遭難時の救助に役立てる意味合いがある。

 登山のだいご味は、自然の大きさと怖さとを体感することにある。それは己の能力や限界と向き合い、他者との助け合いの意味を知ることにもつながる。

 「安全」を意識しながら、山の魅力に触れてみてほしい。