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山の日 多様性と恵みに感謝を

 国土の7割が森林という日本では、太古から山と人間は深い絆で結ばれている。ある時は生活の糧を得る場として、ある時は信仰の対象とし、近代では登山という楽しみ方で多くの人たちに親しまれてきた。

     きょうは「山の日」である。山の懐の広さを再認識する日だ。海の日(7月第3月曜日)に続き自然と親しむ日を増やそうと、2014年に祝日法が改正され、今年から祝日になった。

     山の楽しみ方は千差万別だ。「日本百名山」の著者・深田久弥氏が百の頂に百の喜びあり、と語っているが、その通りである。

     高さで言えば、3000メートル級から低山まで、形は鋭い山塊からなだらかな山容まで多彩である。単独峰もあれば、延々と続く連なりもある。

     登り方もそれぞれだ。難度を追求するスポーツ登山あり。自然との触れ合いを楽しむ人おり。尾根筋の縦走で満足する人がいれば、岩登りなど高度な登山に挑戦する人がいる。体力増強派や健康維持派もいる。

     四季折々での楽しみ方もある。春は新緑のカーテンをくぐり、夏は渓流や高地に涼を求め、秋は紅葉に目を休め、冬は白一色に覆われた山容を慈しむ。この山の織りなす多様性こそが登山の魅力である。直接山に登れない人にも写真集や登山記で分かち合えたらいい。

     山のもう一つの特徴は、変化だ。標高が100メートル上昇するごとに気温は0・6度低くなるとされており、高度に従って生態系が変わる。木々は広葉樹から針葉樹に、そして樹林帯が切れて展望が開け、むき出しの岩尾根となり、下界では見られない高山植物に出合うことができる。

     気象も変化しやすい。風が強く降水量も多い。晴天だと思っていたのがみるみるうちに曇り、雷雨や豪雪になることがある。山が表情を一転させ厳しい顔を向ける時である。

     最近山での遭難が増えている。警察庁によると、15年1年間で発生件数は2508件、死者・不明者は335人と、ここ10年で件数は7割増となった。山の変化を甘く見ず無理のない計画を立ててほしい。

     山は登山の対象であるだけではない。人の暮らしに多くの恩恵を与えてくれる。薪や山菜だけでなく、鉱物資源や木材など産業資源も提供し、山村経済を支えてきた。今またバイオ燃料など里山経済の豊かさが見直されていることにも注目したい。

     登山の感動として、こんな体験を語る人が多い。とても届くとは思えない遠い頂が、小さな一歩の着実な積み重ねによって次第に近づき、ついにはそこに到達できることの驚きと喜びだ。登山が愛されるゆえんである。

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