元々、ある作品の完結は、
当時の編集プロダクションの対応(支払い遅延・打ち合わせ不備など)に
不信感が募った結果でした。
ある作品の連載終了後、私はこの編集プロダクション及びこの版元様の
新規のお仕事を請けるつもりはありませんでした。


ですが後日、その編集プロダクションの対応に関して監督不足であったと
版元様から直接謝罪があり、
今後は編集プロダクションを通してではなく、
直接やりとりをするという前提で新規の執筆依頼と、
ある作品の単行本化の話をお請けしました。


その時点では新規に何を描くかは決まっていませんでしたが、
後日、ある作品の続きを二部として執筆することに決まりました。


そのため、私は二部の構想と同時に、それを前提とした、
二巻に収録する描き下ろしのスピンオフ三編の構想を作成しました。


描き下ろしのスピンオフ三編は引き続き二部を読んでもらえるように、
というコンセプトでストーリーを作成しました。
単行本から作品を知って下さった方にも、
電子で引き続き二部を読んで頂けるようにという狙いで、
二部へ続く布石シーンはもちろん、
直接的なイントロ部分も組み込んでいました。


このスピンオフ三編の構想(プロット)は、二部の本編の構想(プロット)と共に、
担当者と共有の上了承をもらい、原稿作業は順調に進んでいました。


ところが、描き下ろしのスピンオフ三編目、
つまり描き下ろし分最後のお話のネーム(原稿の下書きのようなものです)を提出した際、
担当者より、

「二部は電子配信しかしないため、
 単行本ではネーム内の二部への布石部分は収録出来ない。
 全削除し、完結作品として綺麗に終わるようにネームを調整して下さい。」

 という修正依頼がありました。


私は、
「この内容で描くことはずっと前から決まっていたはずです、
 どのような理由でこのタイミングでそんなことを仰るのですか。
 単行本の続刊が結果的に出なかったとしても、電子で続くなら、
 単行本を完結扱いにする必要はないと思うのですが。」

と、
率直な意見と共に、この状況について担当者に説明を求めましたが、
担当者は説明責任を果たさないまま、ご本人と版元様のご意向で担当替えに。

元担当者の上司にあたる方にどういうことだったのかと説明を求めたところ、


・そもそも単行本が二巻完結であることは版元様と、

 単行本を出す出版社様とで出版にあたり

 最初から定められていた契約だった。


・それを元担当者の独断で、作者である自分に

 この段階まで説明していなかった。


ということが明らかになりました。

私は、

「二巻で単行本が完結することが最初からわかっていたら、
 私は単行本に収録する前提のスピンオフをこのような内容にしなかったし、
 そもそも二部を描こうとも言わなかった。
 これでは構想を考えた時と前提条件が違いすぎる。なんとかならないのか。」

と抗議しましたが、
元担当者の上司からは、
「単行本の二巻完結の契約は最初から決まっていることなので、
 今からはどうしようもない。」
旨を説明されました。


この時点で、単行本一巻は既に発刊されており、
また、描き下ろし分も一部入稿済みで、
二巻発刊予定も具体的な日付まで発表されており、
物理的にもう時間が差し迫っていました。


この一連の出来事のために、

描き下ろし原稿を完成させず二巻そのものを刊行予定通り出さない、

という選択をする事は、私には、とても、とても出来ませんでした。
これは、誰に強要された訳でもありません。自分自身の判断です。


修正可能な範囲で、元々あった二部を直接的に暗示するイントロ部分のページを削除し、
二巻完結でも問題なく読めるよう、作者として誠心誠意対応させて頂き、
他の誰でもない自分自身の手で、もう一度、作品を完結させました。






一連の経緯を改めて振り返っても、
私は漫画家として、当時の自分が出来ることは全てやりきったと思います。


ですが単行本発売後、
その後のストーリーの発展を望む読者さんの声をなし崩しに無視し続けることは、
どうしても出来ませんでした。
例え自己満足だとしても、作者である私自身の言葉で、描けない事情をご説明したかった。


ご期待に添えず、申し訳ございませんでした。


私も続きを描きたかった。描くつもりでした。
たくさん、たくさん、新しいキャラクターも、エピソードも、考えていました。
だからこそ、連載が終了した後にまた、あのキャラクター達を描いたのです。
私は私の力が及ぶ範囲で精一杯やりましたが、
その後、「もう描くことは出来ない」と判断せざるを得ない結果に至るまでの過程で、
私自身の認識の甘さと力不足が原因にあったことは否めません。


本当に、申し訳ございませんでした。


もう、この作品の続きを描くことは、出来ません。

また、この件に関するご質問に、私は一切お答えすることが出来ません。
重ね重ね、一方的なご報告になってしまったことを、心よりお詫び申し上げます。






今日までにいろいろなことがありましたが、

自分の非は潔く認めるしかありません。


まだペンは折りません。


これからも漫画を描いていきます。


読者の皆様には引き続き、それぞれのペースで、
今後ともお付き合い頂ければ幸いです。