2016年08月10日

「60期以降の弁護士人口の変動状況」(白浜先生による調査)

京都の白浜徹朗弁護士が、若手弁護士の登録状況を定点観測されておられますが、
最近、白浜先生がメーリングリストへ投稿された論稿に、興味深いデータが掲載されておりましたので、ご紹介します。

当ブログへの掲載に当たっては、白浜先生から許諾をいただいております。
白浜先生、ありがとうございました。


「60期以降の弁護士人口の変動状況に関する整理表」(白浜先生ご作成)
※画像はクリックすると拡大します。
60期以降の人口変動状況

60期以降の登録人数推移(2016年)


注記にも記載のあるとおり、白浜先生による手作業の集計も含まれているようですので、もしかすると弁護士会等による公式数値とは誤差があるかもしれませんが、非常に確度の高い信頼できるデータではないかと考えます。
1か月ごとの定点観測を粘り強く続けておられる白浜先生の熱意には、敬意を表したいと思います。


注目すべき点はいくつかありますが、まず各期の「登録した最大人数」と「最大人数の占有率」を見てみます。

これを見ると、修習期が下に行けばいくほど、占有率が下がっていることが分かります。
このことは、司法修習を終えた者から裁判官・検察官への任官者を除いた者のうち、弁護士登録をしない人たち(弁護士以外選択者)の割合が、徐々にではあるが確実に高くなっている、ということを意味します。

特に「修習貸与世代」ともいえる64期以降(※正確には修習貸与は新65期からですが、当初は新64期からの実施が計画されていました)を見ると、各期とも修習終了以降も50人以上が弁護士登録をしないまま現在にまで至っているということになります。

直近の68期は、まだ一斉登録から7か月しか経過していないため、これからも登録人数が増え続ける可能性がありますが、
司法試験合格者数が200人近く減少したにもかかわらず、弁護士登録していない人数の絶対値が大きく減るには至っていないようです。
最近、一部のネット上で「修習生の就職状況が改善している」という風評を目にすることがありますが、本当にそうなのかが疑わしく感じられる結果であると思います。今後、68期と(現在修習中の)69期の登録状況がどのように推移していくか、同様の観測をしていく必要があるように思われます。


続いて、「登録した最大人数」と「現在数」の差にも注目してみたいと思います。
「減少数」とあるのは、「一度弁護士登録をしたが、現在は弁護士登録を抹消した人数」を示していることになります。
これを見ると、直近の世代(66期以降)はともかく、60期台の前半ではかなりの登録抹消者が出ていることが分かります。
前述の「弁護士以外選択者」と合わせると、各期とも100人前後が弁護士登録をせず、いわゆる「弁護士有資格者」にとどまっている実態が分かります。

これまでは、新人弁護士の登録状況ばかりに注目が集まっていましたが、今後は登録抹消者数にも注目していくべきだと思います。


なお、登録抹消の理由について、「これは留学等によるものであって、経済的理由によるものではない」とする意見も散見されるところですが、この点につき白浜先生は明確に反論されています。
この分析には、私も賛同します。
弁護士登録しない「有資格者」がこれからも増加していくようであれば、その原因は弁護士業の事業環境等の経済的要因にあると推認すべきであろうと考えます。


(以下、白浜先生の論稿より引用)
この請求退会者のほとんどが留学をしているなどと言われている方がおられるようだが、虚偽の流布であると言わざるを得ない。下記の表は、2012年から2014年にかけて「自由と正義」に掲載された請求退会者のうち登録番号が3万番より大きい数の人で現時点(2016年7月20日現在)で、弁護士に再登録されているであろうと思われる方を調べたものである。「思われる」としているのは、結婚や改名などで名前が変わった方もおられることから、正確とは言いがたいところがあるためだが、登録番号なども確認し、氏名に使われている漢字が特殊な方についてはよみがなも併用して検索するなどして、慎重に検索しているので、まず間違いはないものと考えている。この結果、わかったこととして、2012年では、173名の請求抹消者のうち弁護士に復帰されている方は59名と全体の34.1%となっているが、そのうち留学が確認できた方は18名に過ぎず、全体の10.4%であるに過ぎない(留学経験の確認は、事務所のHPの経歴欄による。再登録者の全員のHPを調べたが、留学経験があるが掲載していない弁護士は1人も発見できなかったので、これもまず間違いないものと考えている。)。これが、2013年は、抹消請求者が217名に増えたのに対して、弁護士に復帰されている方は61名と微増に留まり、全体の28.1%まで比率が下がり、そのうち留学が確認できた方は15名に減少し、比率としても全体の6.9%まで下がっている。2014年は、抹消請求者が230名に増えたのに対して、弁護士に復帰されている方は61名と前年同数となり(22期の方が1名混じっているので、弁護士に復帰された若い方の人数は減っていることになる。)、全体の26.5%まで比率が下がり、そのうち留学が確認できた方は14名に減少し、全体の6.0%となってしまっている。数字として整理したわけではないが、留学された方のほとんどは、いわゆる渉外系の事務所である(その中でも、長島・大野・常松法律事務所の割合は群を抜いて多く、半数以上を占めている。)。ただ、渉外系事務所でも留学される方は減ってきているようである。また、留学された方のほとんどは、東京三会からの退会であり、地方会から留学のために退会された方はあまりおられなかった。要するに、弁護士として復帰している方は全体でも3割に満たなくなっており、留学のために弁護士をやめた人は、ほとんどが東京に集中しているだけで、地方会から留学のために退会する方はほとんどいないし、全体としては1割にも満たないのである。

2012
2013
2014

<参考データ>
新任判事補・検事の任官者数の推移、弁護士一斉登録時点での未登録者の推移
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52142652.html

schulze at 12:58│Comments(0)司法試験 | 司法制度

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