岡田将平
2016年8月8日15時00分
本棚にずらりと並ぶ分厚い黒い冊子。通称「黒本」。長崎の被爆者3万人分の被爆体験記だ。その存在はあまり知られておらず、身内でも最近になって気付いた人もいる。3万人分の「伝えたいこと」。埋もれさせてはいけないと、光を当てる動きもある。
■亡き父の足跡知る
収蔵しているのは、長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館。長崎原爆資料館の横にあり、原爆犠牲者の慰霊のため、2003年に開館した。
国は戦後50年に合わせ、1995年度に被爆者の実態を調査。その際、被爆者から手記を募った。
多くは肉筆でつづられている。1枚にびっしり文字が並んだものや、「言葉になりません」「忘れたい」など、わずかしか書かれていないものもある。祈念館の智多正信館長は「被爆者の感情がもろに出ている大切な資料。被爆者がいなくなった時にすごい遺産となると思う」。担当職員の神徳孝子さんは「ストレートな気持ちが凝縮されていて伝わるものがある」と語る。
認知症の母との日々を描いた漫画「ペコロスの母に会いに行く」の作者で長崎市に住む岡野雄一さん(66)は2年前、記者を通して、2000年に亡くなった父・覚(さとる)さんの体験記の存在を知った。
覚さんは、1枚の用紙にきちょ…
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