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 《解説》今年の平和宣言の根底にあるのは、核兵器の問題は国と国の関係を超えて、人類全体の問題だという訴えの表明だ。

 5月のオバマ米大統領の広島訪問について、宣言は「自分の目と、耳と、心で感じることの大切さを示した」と訪問自体は評価をした。長崎の被爆者や平和活動にかかわる人らでつくる起草委員会では、演説に核廃絶に向けた具体策がなかったことを指摘する声もあったが、委員長を務める田上市長は「大統領の訪問を未来につなげることこそが大事」との考えで内容についての評価を控えた。

 宣言文では、長崎や広島に限定した言葉ではなく、「人間」という言葉を用い、「原子雲の下で人間に何が起きたのかを知ってほしい」と世界のリーダーや市民に被爆地訪問を呼びかけた。全ての人にとって被爆地訪問が核廃絶の原点になるという考えに基づくものだ。

 現在、国連欧州本部で開会中の核軍縮を巡る作業部会では、立場の異なる国の間で対立が続いている。田上市長は「(核兵器の禁止に向け)前進をしているからこそ、壁にぶち当たっている」と語る。宣言では、対立が続く状態に懸念を表明。「人類」という言葉を3回使って強調し「解決策を見いだす努力を」「持てる限りの『英知』の結集を」と訴えた。(岡田将平)