終わらせるんだ、大丈夫。もともと初恋なんて実らない――
こんにちは、氷太よ。
今日は鈴木ツタ先生の
『3軒隣の遠い人』
を頂いていくわね。
この漫画、主人公の葛藤がガチで面白いのよ。
冷静な主人公が、理論に沿って自分の感情を受け止め自覚し、不器用ながら相手に伝えようとする。
そんな部分に共感してしまって夢中になっちゃったわ。
仕事行く時間になっちゃったから一旦途中で読むの止めて、会社に向かったんだけど仕事中この漫画の事で頭一杯になっちゃってたもんね。
まさか上司も予想が付くまい・・・。
平均客単価とか損益分岐点の前年度の比較データを提出し、一緒に数字を神妙な顔で見ながらBL漫画の事を考えていようとは・・・!!
あらすじ
3歳年上の幼馴染と、10年ぶりに再会!?
サラリーマンの光也が転勤先のアパートで隣人になったのは、兄の親友で初恋の人・昇!!
中学3年生の時に強引に押し倒して以来、昇に避けられ続けていた光也。
それをずっと後悔していたのに、昇といると唇の感触を思い出しては封印した想いを募らせて――!?
こんな感じの漫画ね。
過去編と現在に分かれて描かれていく事になるわ。
この 「封印した想いを募らせて」って部分。
ここが本当に良いのよ・・・!!
常に冷静でいるこの光也が、だんだんと自分の本当の心に飲み込まれていくのよね。
恋は盲目って言うけども、本当にその通りなのよねえ・・・。
普段の自分からは考えも付かないような思考を持ったり、行動をしてしまうものなのよ。
惚れるってそういう事なのよ。
そういったギャップの部分にも注目して頂きたいわね!
腋の臭いも嗅ぎそうにないこの冷静な光也が、恋に溺れていく様子をね!
それにしても氷太、今日めちゃ汗かいた上に風呂まだなのよね。
・・・怖くて臭い嗅げないわ。
登場人物
光也(表紙左)
現在は冷静冷徹なサラリーマン。
昔も今もちょっとだけこじらせている人。
基本的には無表情で、感情よりも理論に基づいて行動するタイプ
ボク、君みたいな子もアリかな・・。君はボクの事ナシなんだろうけど。
昇(表紙右)
光也の兄貴の幼馴染でもあり親友。
昔は光也を含む3人でよく遊んでいた。
光也の兄貴への恋心は叶うことはなかった。
この子を、ホモと考えて読み進めないと物語がおかしい事になる☆
_人人人人人人人人人人_
> 気をつけよう!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
感想
厳しい事言うけども、一部分のダメな要素が他の9割の良い要素を侵食しちゃってる漫画っていう印象ね。
もうほんっとよくある、ノンケのくせにホモよりもホモホモしいBL漫画におけるご都合的な展開。
2点あげると
・少年時代の光也から昇へのアプローチ
・現在の昇の男耐性の高さ
この2点が問題になるわ。
特に初見では、この該当する出来事のページに辿り付いた時に必ず頭が
「!?」
ってなるわ。
『サイコメトラーEIJI』かっつーの!!
*サイコメトラーEIJIはリアクションに「!?」が多用される
・・・正直怒りが湧いてくるくらいだったわね。
ただし!!
前者の光也のアプローチに関しては、大人になった光也の物語を見ると考えなしの安易な行動ではなかったんだと納得させられる。
ここ本当に凄いわよ。
直接的な説明なんかないの。
今置かれている状況と過去にあった出来事をゆっくりと重ねて考えていくのよね。
ザックリと説明していくわよ。
そもそも少年時代の光也は、恋っていうものを知らなかったのよね。
それで大人になって、何人かの女性とお付き合いをするわけ。
でもお付き合いをする女性にはある共通する部分があるのよね。
でも気持ちが入り込まない部分があるのか、恋愛に対して苦手意識を持つようになってしまっているの。
そんな中昇と再会して、過去の出来事に思いを馳せる。
そして、大人になった今だからこそ理解していくの。
少年の時に昇に対してとってしまった、読者すらも置いてきぼりにするような不可解な行動の意味をね。
ここ、凄いとアタシは思ったわ。
マジで小学生並の感想で申し訳ないんだけど、こんなにもページ数割いてそんな単純な事を間延びもせずに自然に描いているのかと。
前にレビューした
『スロースターター』
これに近いものがあるけども切り口は真逆ね。
「スロースターター」は出来事が同時進行していってそこに気持ちが伴っていくわけだけども、この「3軒隣の遠い人」は現在から過去を掘り起こしていくような、時間の逆行に焦点を置いた漫画なのよ。
だから結論としては、この突拍子もないような行動がなければ物語の良さが出なかったと言えるわね。
ただ、後者の昇、テメーはダメだ。
女性目線ではどうなのかアタシには分からないけども、ホモの視点からすると体が震えそうになるくらいムカムカする。
ここで
アタシが凄くムカツいた、昇のセリフTOP3
をご紹介します。
第3位
「付き合ってみる?オレたち」
・・・お前何様なの?
なに?
「付き合ってみる?」って。
お試しなの?
自分の気持ちを確認したいがために付き合おうとしてるの?
答えが出てから出て来いや!!(#゚Д゚)ドルァ!!
どんだけ誠意のねー野郎なんだテメーはよ!!
第2位
「でもオレ小心者だから男に走ったりできなかった」
ここ初見では何も思わなかったんだけど、この後のコイツの行動は明らかにレベルの高めなホモ。
ホモであるアタシが認めるほどの異例の事態になってしまったわ。
この違和感、2回目で分かった。
コイツって、ホモだったはずじゃん。
光也の兄貴に恋してたじゃん。
そんな事実とこの後の展開と、この「男に走ったりできなかった」が結び付かな過ぎて困惑したわ。
これが現実のホモもよく使っている謎のノンケアピールに被って見えて、アタシの顔は鬼になった。
第1位
「あ・・いれていれて・・・!」
なんなのこれもう・・・。
この部分だけ違う作家が描いてるの?
これ、第2位の謎のノンケアピールの後のセリフなんだけど・・・。
意味不明っていう領域超えて、心肺停止しそうになったわよ。
ここよ、この部分があるからこそあらかじめ
「ホモとして考えないと物語がおかしくなる」
って書いといたのよね。
仮にノンケアピールが真実だとして、男とは初めてだとしようか。
・・・なぜお尻を既に洗っているんだ貴様は。
・・・なぜすんなりとウケを選んでいる?
・・・なぜお前がリードしているんだ?
もうこのラストの昇の発言を全体的に考えると、上っ面のキレイな事ばかり並べている単なる快楽主義者にしか見えない。
クズならクズでそれを全面的に出してくれれば良かったのよ。
なのにそのクズ要素をキレイな部分で覆い隠そうとしているように見えるのが気に食わないし理解できない。
まとめ
いい意味でも悪い意味でも、過去に捕らわれながらもがく人間を非常に繊細に描いているので、後半まではマジで名作と言っていいほどのクオリティ。
ただし最後の最後で空高く飛んでいた世界観を地に叩き付ける漫画。
ガチでラストが酷すぎるけども、数ページだし他の部分はやっぱり良いので一応妥協してオススメとさせて頂くわ。