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原因・タイプについて |
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AD/HDとアスペルガー症候群などの自閉症圏の障害は基本的に違うと考えられてきました。しかし、ひとりの子どものなかで両方の姿がみられる場合もあります。両者の関係と対応法について考えます。 ■タイプで変わる課題と対応 ■その原因と3つのタイプ |
■…ひとりの子の中に同居する 中学生になったSくんは、最近まわりと上手くいかないと嘆くようになりました。他の子たちと自分は違う、とも思いだしたようです。 ●お口の多動 どうして上手くいかないかとSくんに聞くと、おしゃべりで人の話を聞かないからだと言います。授業中もよくしゃべるようで、人の迷惑になっていると自覚しています。こういう姿には、AD/HDの特徴が現れています。「お口の多動」という状態です。衝動性の強いAD/HDの子の中には、思ったことを黙っていられない子がいます。「発語の自己コントロールができない」と表現されたりします。 ●人を非難する 彼は、他の子が校則違反をするのが許せません。先生に話に行ってしまいます。友達が悪いことをした時に、「センセーに言ってやろ」とはやし立てるのは、小学校低学年までの姿です。規則やルールをたてに、一方的に人を非難するのは社会性が幼いと言えます。関係ができてくると、仲間を傷つけたり、大人に告げ口してはいけないことがわかってきます。こういう変化があって、子どもたちは「徒党が組める」ようになります。告げ口する子は徒党に入れません。こういう姿は、アスペルガー症候群の子たちに、ときに見られるものです。 ●AD/HDと自閉症 最近出版された『ADHDと自閉症の関連がわかる本』(ダイアン・M・ケネディ著、海輪由香子訳、明石書店刊)では、題名どおり両者の類似点を示しています。 1.患者集団と診断法の類似点 2.ぶきっちょなところ 3.感覚反応の奇妙さ 4.共存症の類似点 5.実行機能など障害の類似点 6.言っている意味がわからない 7.みんなのように遊べない 8.行動の類似点 9.同一性の保持など ●類似点と対応法 AD/HDと、アスペルガー症候群などの自閉症圏内の子どもは、基本的に違うと見られてきました。ただ実際には、ひとりの子どもの中にSくんのような姿が見られます。二つの病気が併存していると考える立場もありえます。実は根っこの発達障害はひとつであり、現れ方が違うだけと理解するのがこの本の立場です。どちらが正しいかは、これから先の研究が明らかにしてくれるでしょう。
■月刊 発達教育より 湯汲 英史(発達協会王子クリニック)言語聴覚士 |
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■月刊 発達教育より 湯汲 英史(発達協会)言語聴覚士・田中 亜古(発達協会)社会福祉士 |
≪主な行動特徴-AD/HDのタイプ別・及び広汎性発達障害との比較≫
(社)発達協会 王子クリニック心理・言語室
作成 (2003年第一版)
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(a)多動−衝動性優勢型
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(b)不注意優勢型
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高機能広汎性発達障害
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| 判断基準 (*1) | 気分で判断、幼いレベルで判断 | 気分で判断、幼いレベルで判断 周りに流されやすい | 時間・数・知識等の外部基準に依拠する傾向、独自の論理で判断することも | |||||||||||||
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社 会 性 |
対人関係
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関わりたい気持ちは強いが、関わり方は上手ではない | 関わり方は上手ではない | 対人興味は持つが、関わりは少ないタイプと、関わるが上手ではないタイプがいる | ||||||||||||
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会話
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おしゃべり、話を聞くのが苦手、失言が多い | 話がまとまらない | 事実のみを話し口数の少ないタイプと、自分の興味のままに一方的に話すタイプがいる | |||||||||||||
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気持ちの理解
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相手の気持ちを理解できるが、自分の都合を優先し、相手を思いやれない | 気持ちの理解はできるが、相手に合わせてしまい、自分の気持ちに気づきづらい | 相手の気持ちを理解しづらい | |||||||||||||
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集団参加
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ルールを守れず、トラブルが多い。他の子に嫌われることも | お世話される、幼い扱いをされる | 設定の明確な場面(授業等)では目立たないことも。自由時間はひとりが多い | |||||||||||||
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親子関係
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とくに母親に反抗しやすい | とくに母親に反抗しやすい | とくに母親に対し、依存的 | |||||||||||||
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約束
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自分の都合を優先させ、守れない | 忘れてしまう、ついうっかり破ってしまう | 納得していれば、守る | |||||||||||||
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生 活 面 |
整理整頓
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途中で他のことに気をとられやすい | 分類する・順番に片づける・元に戻などが困難 | 決まったとおりにやる、こだわることもある | ||||||||||||
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忘れ物・落とし物
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しばしばある、見つからず大騒ぎすることも | 頻繁にある | あまりない、元の場所に戻す | |||||||||||||
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お手伝い
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自分の都合を優先させ、やれないことが多い | 後回しにするうちに忘れてしまう | 決まった仕事はやる | |||||||||||||
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身辺自立
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服を脱ぎ散らかす等ルーズ、雑 | なかなか始めず、後回しにする | 一定のやり方でやる、マナーには無頓着 | |||||||||||||
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睡眠
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なかなか寝つけない、起きられない | なかなか起きられない | 決まった時間どおり | |||||||||||||
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タイプ別特徴 重点課題と対応 |
気分や自分の都合で判断・行動
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外部基準に基づいて判断、教えられたとおりにやる相手に合わせるよりも、自分の論理で行動
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注)AD/HDには以下の3つのタイプがある
(a)多動−衝動性優勢型、(b)不注意優勢型、(c)混合型:多動−衝動性と不注意両方に当てはまる
*1 判断基準:人が何かを判断し、行動する際に手がかりとなる基準
■月刊 発達教育より 湯汲 英史(発達協会王子クリニック)言語聴覚士
小倉 尚子(発達協会王子クリニック)言語聴覚士