周囲の対応 (2/2)
「外出先で騒ぎ出す」そのとき、どう対処する?
ADHDの衝動性は、周囲にはいわゆる「キレる」という見え方であらわれることがあります。
そんなときには、冷静に対処することが大切です。
ADHDの子は気持ちの変動に伴って、自分の衝動が抑えられなくなり、大声を出したり、突然走り出したりしてしまうことがあります。
外出先でこのような状態になると、周囲の目もあって、親としてはいたたまれなくなってしまうでしょう。
しかし、ADHDの子は何の理由もなく、衝動的な行動をとることはありません。
なぜ、そのような行動をとったのかをよく見てあげることが大切です。
子どもがこういった行動をとったときに、感情的になったり力ずくで従わせようとすると、よけいに反発してしまいます。
子どもと競うように大声を出すことはやめ、できるだけ落ち着いたトーンで話しかけ、興奮を鎮める方向に持っていきます。
レストランや店の中などで騒ぎ出したときにはひとまず場所を移動して、気分を変えさせましょう。
また行動療法の手法を用いて、できるだけ冷静に対処することが大切です。
言うことを聞かないので、親もついつい「手をあげて」しまう
子どもの行動が原因で、親のほうもイライラしてしまうことがあるかもしれません。
しかし、イライラの原因は子ども本人ではなく、その子の「ADHD」なのです。
ADHDによる子どもの行動が、親のストレスの要因になるのは確かです。
しかし、子どもに手をあげても何の解決にもなりません。
ADHDの子は、衝動的な行動が原因で叱られたり嫌がられたりすることが多いため、自己否定感や疎外感を募らせ、傷つきやすくなります。
学校でつらい思いをして、家に帰ってから親に叩かれてしまっては、子どもの安心できる場所がなくなってしまいます。
また、叩かれることで子どもの自尊心はとても傷つきます。
長い目で見ると、自尊心が育たないことは子どもの将来に多大な影響をもたらします。
自尊心が育たないと対人関係がうまく築けなくなり、二次的に行為障害(非行)を引き起こす誘因ともなります。
カッとなって手をあげてしまうのは、親自身、自分を抑えられないことに原因があるのかもしれません。
冷静になって、自分の行動を振り返ってみることも必要です。
ほかの「兄弟」への配慮は、どのようにすればよい?
ADHDの子がいる兄弟は、少なからずその影響を受けます。
親としては大変な面もありますが、ほかの兄弟への配慮はとても重要です。
家庭内にADHDの子がいる場合、親はどうしてもそちらに手がかかり、ほかの兄弟はがまんすることが多くなってしまいます。
同時に「親は全然自分のことを見てくれない」と孤独感を募らせて、気持ちが不安定になることがあります。
ADHDのことを理解してもらうことも大切ですが、時にはほかの兄弟にも思いっきり甘えられる状況を作ってあげてはいかがでしょうか。
「あなたのことも十分に愛している」という気持ちが伝わっていれば、どうしてがまんしなければならないのかをちゃんとわかってくれます。
また、親やADHDの子の苦しみを目の当たりにして、ほかの兄弟が助けてあげようというやさしい気持ちが芽生えるケースもたくさんあります。
家庭内できちんと話し合い、ほかの兄弟にもできる範囲で手助けを頼むとよいでしょう。
親はすべての子に十分な愛情を示し、兄弟のいるメリットを生かす方向に持っていくべきです。
「共働き」が原因?今すぐ仕事はやめたほうがよい?
ADHDの症状は、親が共働きをしていることが原因であらわれるわけではありません。
夫婦間で、治療方法などへの共通認識を持つことが大切です。
共働きの場合、働いている時間は夫婦ともに、ADHDの子どもを見てあげることができません。
しかし、そのことが原因でADHDの症状があらわれるわけではありません。
ADHDの症状というのは、あくまで生まれつきのものです。
ただし、親の対応によっては、子どもが感じるストレスは大きく異なります。
母親の理解は進んでいるのに、父親はADHDに関心や理解を持っていないというような場合、その対応には差が生じるため、子どもはとても混乱してしまいます。
つまり、共働きをしているかどうかよりも、夫婦間でADHDに対する協力態勢がきちんとできているかどうかが大切なことなのです。
共働きをしていても、帰宅後一緒に過ごす時間の中で、ADHDへの理解を深めることはできるはずです。
夫婦間で生活環境や子どもへの接し方、治療方法などをよく話し合い、お互いに助け合いながら対処していくことが大切です。
「近所の人」や「親戚」には、どんなふうに説明すればよい?
ADHDのことをよく知らない人から見ると、その行動は非常識に感じられることもあるでしょう。
偏見を受けないよう、うまく説明することも大事です。
近所の人や親戚が大勢集まる場は、集会や葬式、結婚式など、いわゆる「静かにしていなければならない場面」であることが多いものです。
そういった場面で、騒ぎ出したりまわりの子にちょっかいを出したりすると、「親はいったいどんなしつけをしているんだ」と、眉をひそめられてしまうこともあります。
そんなとき、いきなり「この子はADHDという障害を持っているんです」と説明するのは、よい方法とはいえません。
知らない人にとっては「親の責任逃れ」ととられてしまいますし、見当違いな偏見を持たれてしまうこともあります。
ADHDの概念を詳しく説明するよりも、「子ども特有の性質が、極端にあらわれてしまうたちなのだ」といった説明にとどめておいたほうがよいでしょう。
ADHDについて多少の知識を持っている人がいたら、子どもの3〜5%に見られるもので、決してめずらしい障害ではないことを強調しておくとよいでしょう。
友だちに「ケガ」を負わせてしまったとき、どうすればよい?
ADHDの子は、その衝動的な行動から、時には友だちを傷つけてしまうこともあります。
そんなとき、親はどのように対処するのが適切なのでしょう。
自分の衝動を抑えることのできないADHDの子は、ケンカして友だちに手をあげたり、殴ってしまったりすることがあります。
ADHDの子は通常、理由もなくそのような行動に出ることはありませんが、手を出したことに対しては、厳しく叱るべきです。
そして、万が一相手にケガを負わせてしまったときには、まずは親子ともども誠意をもって謝罪することが大前提になります。
相手はケガを負わされて、大変ショックな状態にあるはずです。
こんなときには「ADHDだから理解してください」と言っても、なかなかわかってもらえないものです。
逆にADHDに対して、悪い印象を持たれる可能性のほうが高いかもしれません。
その場ではADHDには触れず、「ケガを負わせたこと」に対してきちんと謝りましよう。
そのうえで、障害については、折を見て説明したほうがよいといえます。
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