千葉雄高 永野真奈
2016年8月10日21時42分
東京電力福島第一原発の事故後、入院していた双葉病院(福島県大熊町)から行方不明になり、後に失踪宣告を受けた女性(当時88)の家族が、「失踪は原発事故が原因だ」として4400万円の損害賠償を東電に求めた訴訟の判決で、東京地裁(水野有子裁判長)は10日、東電に2200万円の支払いを命じた。
判決は「大震災の発生後も病院は患者の十分な見守りをしており、原発事故がなければ失踪は防げた」と述べた。家族の代理人弁護士によると、原発事故と失踪の因果関係を認めた判決は初めてとみられる。
判決によると、女性は認知症で同病院に入院。2011年3月12日に原発事故による避難指示が出された後、14日までは院内で姿が確認されていたが、16日に自衛隊が救助を完了した際には見当たらず、捜索しても発見されなかった。家族が申し立てた失踪宣告が13年9月に認められ、法律上は死亡が確定した。
東電側は訴訟で「原発事故ではなく、震災による混乱が主な原因だ」と主張した。だが判決は、「病院の院長らは混乱の中でも徘徊(はいかい)癖のあった女性の外出防止に相当な注意を払っており、原発事故で避難を強いられなければ、見守りを続けられた」と指摘。その上で「女性は過酷な状況で、住民もいなくなった地域を放浪して死亡したと考えられる」と述べ、慰謝料は2千万円と判断した。
東電は「判決の内容を確認した上で、引き続き真摯(しんし)に対応して参ります」との談話を出した。(千葉雄高)
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