イチロー金字塔 さらなる挑戦を見たい
米大リーグ、マーリンズのイチロー選手(42)がさらなる高みに達した。通算3000安打は100年以上の歴史を誇る大リーグにあって史上30人目となる快挙だ。プロ野球のオリックスで9年プレーした後、27歳で海を渡り、わずか16シーズンで大台にたどり着いた。
打球が右翼フェンスを直撃して転々とする間にイチロー選手は悠々と三塁に到達した。その瞬間、敵地のファンも総立ちで祝福した。
3000本を超える安打を放った打者のリストには4256安打のピート・ローズを頂点に球聖タイ・カッブ、本塁打王ハンク・アーロンらそうそうたる名前が並ぶ。ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグら野球ファンなら誰もが一度は聞いたことのある伝説の打者でさえ到達し得なかった数字であることを知れば、その偉大さが分かろう。
通算3000安打は数ある記録の中でもひときわ輝くマイルストーン(金字塔)で、イチロー選手が引退後、米国の野球殿堂入りを果たすのは間違いないだろう。
日本で7年連続の首位打者になったイチロー選手が2001年マリナーズに移籍した際、環境の異なるメジャーで通用するかどうか危ぶむ声があった。野茂英雄ら投手は実績を残していたが、野手はイチロー選手が初めてだったからだ。
だが、そのシーズン、首位打者、盗塁王、新人王に加え、最優秀選手賞まで獲得して日米の野球ファンを驚かせた。デビューから10年連続200安打を達成し、04年にはシーズン最多となる262本を放った。
オリックス時代から打率より安打数に重きを置いていた。打率の上下で一喜一憂するよりも、積み重ねの安打数は凡退しても減らないからいい、という説明だった。
かつて、ヒットを打つ技術を「授かりもの」と語ったことがある。「努力の人」とみられることを嫌っての表現だろう。だが、小学校時代、地元のバッティングセンターに通い詰めて技術を磨いた逸話が示すようにたぐいまれな向上心の持ち主であり、今も変わっていない。
名門ヤンキースを経て昨年移籍したマーリンズでは「第4の外野手」の位置付け。先発よりも代打での出場が多いが、準備は怠らない。スピードが衰えていない証拠に4月にはメジャー39人目となる通算500盗塁を記録した。
「50歳で現役」を公言するイチロー選手は記者会見で「達成感を味わえば味わうほど前に進めると思っている」と話した。野手では大リーグ最年長ながら、けがとは縁がない。出場の機会に恵まれさえすれば記録の上積みは確実だ。