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相次ぐ赤字ローカル線廃止、地方「切り捨て」の足音が聞こえる

ビジネス+IT 8月10日(水)6時10分配信

 赤字ローカル線廃止の動きが全国で相次いでいる。北海道では、留萌線の一部が12月で廃止されるほか、JR北海道が大幅な路線縮小を関係自治体と協議する方針を示した。中国地方では、JR西日本が広島県と島根県を結ぶ三江線の廃止を近く正式発表するとみられる。地方の人口減少が急速に進んでいることなどから、島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「今後も赤字ローカル線の問題が浮上する」とみている。地方創生の時代に地方切り捨ての足音が聞こえる。

JR北海道は全線が営業赤字、総額は約400億円にのぼるという(2014年度)

JR北海道は路線の抜本的見直しを計画

 「すべての路線を維持したのでは経営破綻を避けられない。持続可能な交通体系を地域の皆さんと相談したい」。JR北海道の島田修社長は7月末、札幌市で記者会見し、鉄道事業を抜本的に見直す方針を明らかにした。

 JR北海道は近く、運行している14路線、約2,600キロのうち、単独で維持困難と判断した区間を関係自治体に提示する。そのうえで地域の公共交通維持に必要な対策を協議する方針だ。

 見直しの対象となる区間は明らかにしていないが、島田社長は会見で利用の少ない区間を対象とする見方を示唆した。運賃の引き上げなどで対応しきれない区間については、バスなど代替交通機関への転換もやむなしとしている。

 北海道は札幌圏を除き、全国を上回るハイペースで人口減少が進んでいる。このため、1975年の輸送密度(営業距離1キロ当たりの1日平均旅客輸送人員)を100として見ると、10分の1に落ち込んだ区間も出てきた。

 JR北海道が道主催の地域公共交通検討会議に提出した資料によると、2014年度の全14路線30区間はすべて赤字で、うち7路線10区間が輸送密度500人を下回った。輸送密度500人程度の区間では燃料費も賄えない。

 JR北海道は運賃収入の低迷に加え、修繕費や安全対策費を先送りしてきたことが影響したため、2017年3月期の経常損益が175億円の赤字となる見込み。このまま全線を維持し続ければ、毎年200億円近い赤字が出る可能性がある。借入残高も2019年度には1,500億円に膨らむ見通しだ。

 赤字解消や借入金の返済、老朽化した橋の更新を考えると、年間200億円ほどの収支改善が必要になる。輸送密度2,000人未満の区間の赤字が全体で約200億円に達することから、JR北海道は輸送密度2,000人未満を維持困難な路線の目安と考えているもようだ。この場合、宗谷線など11路線が該当するという。

 北海道交通企画課は「赤字のすべてを線区の見直しで補おうとするのなら、北海道の交通ネットワークに与える影響はあまりにも大きい」と困惑している。

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最終更新:8月10日(水)6時10分

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