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相次ぐ赤字ローカル線廃止、地方「切り捨て」の足音が聞こえる

ビジネス+IT 8月10日(水)6時10分配信

ひと足早く留萌線の一部が12月に廃止

 路線見直しに先立ち、廃止が決まったのが、留萌市と増毛町を結ぶ留萌線の留萌-増毛間16.7キロ。JR北海道は既に両市町の同意を得て、鉄道事業廃止届を国土交通省北海道運輸局に届け出た。

 同区間は故高倉健さん主演の東宝映画「駅 STATION」(1981年、降旗康男監督)のロケ地として知られるが、2014年度の輸送密度はわずか39人。100円の営業収益を上げるのに、4,554円もの経費がかかる。2014年度では約2億円の営業損失が出ていた。

 両市町は当初、廃止に強く抵抗していたが、JR北海道が増毛町に代替交通機関運用経費の一部負担や駅周辺整備事業への費用拠出を申し出るなどして両市町を説得、12月4日限りで幕を閉じることになった。

 増毛町は7月末現在の人口約4,600人。漁業が盛んな町だが、1970年に約1万1,000人を数えたのに、半分以下に落ち込んでいる。高齢化も深刻で町民のざっと4割が65歳以上の高齢者だ。留萌線は高齢者ら交通弱者の足になってきた。

 増毛町町民課は「廃止の受け入れは苦渋の選択で、今も残念でならない。今後は路線バスで町民の足を守っていきたい」と厳しい口調で語った。

JR西日本は三江線全線廃止を近く表明

 中国地方では、三江線の廃止問題が浮上している。沿線の6市町でつくる三江線改良利用促進期成同盟会は8月1日、大阪市のJR西日本本社に来島達夫社長を訪ね、JRの路線としての存続を要請した。

 これに対し、来島社長は運行継続について「非常に厳しい」と答えた。JR西日本は9月に島根県美郷町で開かれる期成同盟会の臨時総会で三江線の全線一括廃止を表明するとみられる。

 三江線は広島県三次市から中国山地を通り、島根県江津市を結ぶ108.1キロ。沿線6市町に35駅があるものの、沿線人口の減少で2014年度の輸送密度は約50人と、JR西日本が発足した1987年度の9分の1まで減少している。

 島根県や沿線6市町などは三江線活性化協議会を設立、毎年500万円から1100万円余りを拠出して利用促進事業を展開してきたが、輸送密度を押し上げるほどの効果はなかった。

 さらに、活性化協議会とJR西日本が潜在需要の調査をしたところ、現状の1.2倍の増客にとどまることも分かった。これを受け、JR西日本は2015年秋、広島、島根両県と沿線6市町に持続可能な地域公共交通の検討に入ることを申し入れた。

 期成同盟会が代替交通の検討を進めたところ、バス転換なら年間1億2,000~1億9,000万円、第三セクター方式で鉄道運営すれば年間最大8億5,000万円の費用が必要との試算が出た。しかし、廃止となれば高校生の通学の足が奪われ、買い物や医療難民の増加も予想される。住民の間では存続を求める声が非常に強かった。

 三江線期成同盟会、活性化協議会の事務局を務める島根県邑智郡町村会は「存続を望むこちらの思いが届かず、はがゆい」と肩を落とした。島根県交通対策課は「県としては地元の意向を支援していきたい。住民が願う方向で結論が出れば良いのだが」と対応に苦慮している。

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最終更新:8月10日(水)6時10分

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