芥川賞が設立された経緯と、記念すべき第1回芥川賞を受賞した「蒼氓」を紹介します。
芥川賞が設立された経緯
芥川賞は、直木賞と並んで日本文学にとって名誉のある賞として知られています。この芥川賞は新人作家の発掘と、芥川龍之介の功績を讃えるために設立されました。
芥川龍之介は、日本の天才的な作家として知られて、蜘蛛の糸・羅生門など日本文学に輝く名作を次々に創作していきました。芥川龍之介が長生きをしていたら、さらに名作が生まれていたのは間違いなかったでしょう。
しかし、残念ながら芥川龍之介は35歳という若さで謎の服毒自殺をするのです。遺書も残されており、他殺の疑いはありませんでした。この自殺は社会に相当の衝撃を与えて、自殺をした原因も数多くあげられました。生きる意味が無くなった事や、創作の限界の壁に苦しんだ事など色々と囁(ささや)かれましたが、分かっている事は日本文学にとってなくてはならない人物を失ったという事だけです。
蒼氓が芥川賞に選ばれた理由
芥川賞は純文学(商業的ではなく芸術に力を入れた文学)の作品から優秀と認められた小説が選ばれます。その第1回に選ばれた「蒼氓」は日本からブラジルへ向かう移民の苦難に満ちた航海を描いた作品です。この作品が選ばれたのは、作家にとって日常生活とかけ離れた題材を扱った作品である事が大きかったようです。
私がこの小説を読む前に、密かに楽しみにしていたのはブラジルでどのような生活を先祖が送っていたのか?それを読みたかったのですが、この作品では航海をしている時の移民の生活に重点が置かれています。
ブラジルの生活はあまり書かれていませんでしたが、どのような想いで移民しようと思ったのか克明に書かれており、読み応えのある小説でした。