僕は今年の母の誕生日にグッチの赤い折り畳み傘を某店で買い、母親にプレゼントをした。
しかし、その折り畳み傘をめぐり、店側と熱い戦いを繰り広げ、結果的に返品することになった。
いや、熱いというよりかはほぼ一方的な勝利だったのだが。
なぜそうなったのか、一部始終をご覧いただこう。
プレゼント購入
そもそも、僕は普段ブランド物を買うときは必ず百貨店で買うようにしている。
百貨店にはそこはかとない安心感がある。
しかし、母親の誕生日の前日は夜遅くまで仕事があり、当日も夜遅くまで仕事の予定があった為、百貨店が開いている時間に買い物にいく時間がなかった。
しかし、誕生日のプレゼントは、誕生日に渡さなければ意味がない。
そうすると、誕生日前日の夜中にプレゼントを手に入れるしかない。
なので、しぶしぶ、並行輸入のブランド品を扱う24時間営業のディスカウントストアで仕事終わりに購入をすることにした。
予算1万円前後で、何かブランドの小物が買えないか探していたところ、折り畳み傘が1万2千円でおいてあった。
傘なんて普段自分で買うことはないだろうと思い、即決。
店員を呼びつけ、ショーケースの中にあるグッチの折り畳み傘を指さし
僕「フヒヒwwwこれくださいwwwwフヒッww」
と言い、プレゼントをゲットし帰路についた。
翌日は朝早くから仕事があった為、リビングのテーブルの上に傘を置いておき、翌朝母親が気付きやすいようにしておいた。
次の日、仕事中に母親から実に奇妙なLINEが入った。
これが、実際のLINEの画面である。
僕は戸惑いを隠せなかった。
(これだけ文明が発展した現代において、傘の使い方を知らない人間が存在したのか。)
(いや、もしかしたら傘がとんでもなく高性能で、使い方が複雑だったのか。
Bluetoothでスマホに繋ぎ、タップで傘の開閉ができるとか。
いや、そんな無駄極まりない発明、エジソンですら助走をつけて殴るレベルだ。)
そんなことを考えていると、この謎はあっさりと解明されることになった。
母親から直接電話がかかってきたのだ。
母親「あの傘、ボタン押しても開かないんだけど」
僕「ファッ?!」
いや、そんなはずはない。
あれは新品だ。
しかも、大手ディスカウントストアなので並行輸入ではあるが偽物は売っていないはずだ。
しかし、家に帰って僕自身で使ってみると、確かに開かない。
僕は、母の誕生日プレゼントに不良品を渡してしまったのだ。
やっちまった。
僕は怒りを抑えつつ、その不良品を握りしめ、購入した某ディスカウントストアへ乗り込むことにした。
戦いの幕開け
店につくと、女のアルバイトらしき人がいた。
コイツに話しても意味ないだろうな、とは思いつつも、やはり段階は踏むべきだと思い
僕「これ、昨日ここで買った傘なんですけど、ボタン押しても開かないんですよ。
レシート持ってるのでお金返してください。」
女店員「(ボタン押してみる)・・・確かに開きませんね。それでは、少々お待ち下さい」
僕「はい。(そうだ、お前に要はない、さっさと店長を呼びやがれ。)」
待つこと5分。
再び女店員が現れた。
女店員「当店では返金対応が出来ません。
無償で修理をさせていただきます」
僕は戸惑った。
新品の商品を購入したのに、いきなり修理して使えというのか。
しかもプレゼントの品をだ。
僕は果敢に反撃をする。
僕「一度も使用していない新品の商品を、なぜ修理して使用しなければいけないんですか。
有償だろうが無償だろうが、修理という対応は断じて受け入れられません。
失礼ですが、店長をお呼びいただいてもよろしいでしょうか。」
ついに繰り出した。
小物を墓地に送り、相手の手札の店長をフィールドに強制召喚。
さすがに小物と話していてもラチがあかない。
女店員「分かりました、少々お待ちください」
僕「はい。(いいか、もう二度と俺の前に姿を見せるなよ。)」
そして待つこと5分。
ここでようやく店長が登場。
店長「大変お待たせいたしました。
申し訳ございませんが、やはり修理という対応になってしまいます。」
来やがったな。
分かってるんだよ、同じことを繰り返してくることくらい。
まず、僕という人間の印象を決定する一発目の発言で、理性的な客だという印象を付けることにした。
僕「初めに言っておきますが、僕は非常識なクレーマーは嫌いです。
ですが、この件に関して、僕が言っていることは全く非常識な要求だとは思いません。」
自分の希望を通したいなら、感情に任せて文句をつけているわけではないということをしっかり意思表明し、相手に理解をさせる必要がある。
こういった状況下では非常に効果的な導入部分である。
僕「確かにこの傘の初期不良を、購入時に気付けなかった僕自身にも過失があります。
ですが、この傘はショーケースの中に入っており、触って確かめたりすることは出来ませんでした。
このような状況であれば、御社の店員が動作確認をしなかったことは僕以上に大きな過失です。
不良品だと分かっていれば購入することはありませんでしたので、返金以外のいかなる対応も受け入れられません。」
自分の会話に説得力を持たせるために、まずは自分にも過ちがあったよということを認めた上で、相手の過失をつついていく。
店長「は、はぁ・・・ですが・・・」
僕「店長さんは決済権をお持ちではないのですか?
店長さんの上にエリアマネージャーさんとかがいたりするんですか?
誰でもいいのですが、店長さんの一存で返金するかどうかの判断が出来ないのであれば、決済権をお持ちの方とお話しさせてください。」
店長「いえ、決済権は私にあります」
このような場面では誰に意思決定権があるのかをきちんと確認することも大事だ。
もしかしたらこの店長も単なる会社の歯車の一部に過ぎない可能性があり、もしそうであれば先ほどの店員に話しているのとなんら状況は変わっていないからだ。
ここで、意思決定権は店長にあり、僕の説得次第でこの場で返金に応じてもらえる可能性があることを確認する。
僕「それであれば、店長さんご自身の判断で、僕の言い分が間違っていないと少しでも思うのなら返金してください。」
店長「そ、それでは少々お待ちください・・・」
効いてる。
確実に効いているぞ。
そして、15分ほど姿をくらましたのち、戻ってきた。
店長「お待たせしました。
それでは返金させていただきます。
ですが、すぐには返金できません。
一度メーカーに状態を確認してもらわなければならないので、2週間後の返金になります。」
何を言っているのだこのファンキー野郎は。
一体何を確認するというのか。
もう一度この店に来るのも面倒極まりないし、何よりすぐに新しい誕生日プレゼントを買わなければならなかったので、すぐに返金してもらいたかったのだ。
僕はこんなところで妥協はしない。
こういう場面では、相手は一度妥協案みたいなのを提示してくるのだ。
僕の望みはただ一つ。
今この場でお金を返してもらうことだけだ。
僕「え?状態の確認ってなんですか?
壊れているかどうかの確認ってことですか?」
店長「はい、そうです」
僕「いや店長さん、確認ってwww
なーんにも確認することないですよwwww
ボタンを押して傘が開かない。それだけの話です。
単純明快です。」
まぁ正直、メーカーと販売店の間で故障とか初期不良に関するこのような取り決めがあるのは十分承知している。
だが、ここで引き下がってはならない。
そんなのは単なるマニュアルに過ぎない。
意思決定権はこの店長にあるのだ。
マニュアルを無視するという意思決定も店長には出来るのだ。
店長「ですが、一度メーカーに送って、故障であると確定してからでないと・・・」
僕「店長さん、そういう無駄なことはやめましょうよ。
メーカーに傘送って~、メーカーの人が傘のボタンを押して~
"確かに開きませんね、故障です!"
って報告を受けるのに数週間待てっておっしゃっているんですか?
御社とメーカーのよくわからない手続きは僕には関係ありません。
今すぐ返金してください」
店長「・・・・・分かりました、お返しいたします・・・」
完全勝利である。
最後に
今回のような返金騒動において、今になって考えると僕のやった行動が正しいかどうか正直分からない。
一歩間違えるとクレーマーになってしまう可能性もあるギリギリのラインだ。
いや、人によってはクレーマーだと考えるかもしれない。
ただ僕は伝えたい。
このようなケースでも、戦えば消費者たちは泣き寝入りせずに済むのだということを。