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中国出資の原発「待った」 安全保障面を懸念か

 【ロンドン坂井隆之】中国企業が一部出資し英国で約20年ぶりの新設計画となる原発プロジェクトを巡り、波紋が広がっている。7月発足したメイ政権が、計画を再検討する意向を表明。中国側は駐英大使が9日、英紙への寄稿で懸念を表明した。背景に安全保障上の懸念があるとみられるが、蜜月だった英中関係に亀裂が生じかねず、首相の判断に注目が集まっている。

     問題になっているのは、フランス電力公社(EDF)が主導して英南西部に建設するヒンクリーポイント原発。キャメロン前政権下で計画が進められ、昨年10月の習近平国家主席の訪英の際、中国国有企業が事業費の約3分の1を負担することが決まった。

     同原発を巡っては、採用する仏製原子炉に技術的欠陥が見つかったことなどで、事業費が予定を大幅に上回る180億ポンド(約2兆4000億円)に膨らんでいる。旧型発電所の閉鎖で英国は2020年代に電力不足が見込まれることから、キャメロン政権は現行の約2倍もの電力買い取り価格を保証して事業の全面支援を約束した。それでもEDF1社で巨額費用を負い切れず、中国企業に参画を仰いだ経緯がある。

     EDF内でも巨大な投資リスクへの懸念が強く、経営陣は度重なる延期の末、7月28日の取締役会で反対派を抑え込んで計画を承認した。だが直後に英政府が「計画を慎重に検討し、初秋に結論を出す」と再検討を宣言。調印式のため英国に到着していた中国企業幹部がそのまま帰国する異例の事態になった。

     英政府は再検討の理由を明示していないが、英メディアは中国企業の原発事業参画にメイ首相が懸念を持つことが背景と伝えている。キャメロン政権で民間企業相を務めたケーブル元議員は「当時内相だったメイ氏は親中外交を好ましく思っておらず、中国企業の出資に反対していた」と証言。メイ氏最側近のティモシー首席補佐官は、過去に保守党員向けサイトで「中国の情報機関は継続的に反英的活動を行っている」と警戒感を示していた。

     中国側は表だった反発を控えてきたが、劉暁明駐英大使が9日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿で「中英関係はいま、重大な歴史的岐路にある」と指摘し、早期決定を英政府に求めた。欧州連合(EU)離脱を決めた英国にとって中国との経済関係強化の必要性は高いだけに「今さら撤回は困難」(原発業界関係者)との見方は強い。

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