トレーニングとメンテナンスは“両輪”『Cyclist』編集部員が体験 「サイクリストヨガ」で身体をほぐす <後編>
自転車をこぐ運動で酷使する身体の部位を集中的にケアする「サイクリストヨガ」。具体的にどのようなポーズが身体のどの部分に対して効果的なのか。後編では、「サイクリストヨガ」を提唱するヨガインストラクターの大宅陽子さんの指導のもと、プログラムの中から代表的なポーズを体験してみた。
指導を受けるのは『Cyclist』編集部員の松尾修作(27)。元プロ選手で、いまも「ツール・ド・沖縄」やトライアスロン大会への出場を目指し、日々トレーニングに励んでいる。ヨガを受けるのは実は今回が初めて。現役時代から運動前後のストレッチもせず、ひたすらトレーニングしていた身体はヨガの刺激をどう感じるのだろうか。
呼吸で身体と精神を整える
ヨガを始める前にまず重要なことは、呼吸法とポーズによって副交感神経を活性化させ、リラックスすること。左右の坐骨を意識し、「地面と繋がるイメージ」で胡坐の基本姿勢をとる。肩の余分な力を抜き、上半身をリラックスさせた上で横隔膜を広げ、深くゆっくりと腹式呼吸を行う。基本は鼻呼吸。1ポーズあたり3呼吸が目安だ。
正座の状態で上半身を前に倒し、前方に手を伸ばす「エクステンドチャイルドポーズ」をとり、その手を左右に動かす(サイドベンド)。両体側を伸ばし、腰回りの緊張をほぐす。伸ばすことに気がとられ、呼吸を忘れそうになる松尾に、大宅さんは「ヨガは、どこまで伸ばせるかではなく、呼吸を止めずに出来る範囲で行うことがポイント」と促す。さらに四つ這いの姿勢から「糸通しのポーズ」へ。ハンドルを握り続けることで固まりやすい肩甲骨まわりをほぐし、同時に肩や背筋の血行を促進する。
四つ這いの姿勢から背骨を上下に動かす「キャット&カウ」のポーズ。背骨には身体や心のバランスを保つための自律神経があり、動かすことで活性化する。「ライド中に腰が痛くなるサイクリストにはおすすめのポーズ。習得すれば自転車の上でもケアできるようになります」と大宅さん一押しのポーズだ。
「下向きの犬」という意味の「ダウンドッグ」。全身を安定させ、疲れにくい身体を作る上で効果的なポーズだ。骨盤や肩など幅広く調整するほか、腰回りや、サイクリストにとって盲点になりがちな脚の裏側にある筋肉にもアプローチする。こぐ運動ばかりで普段伸ばし慣れていない部位に「ビリビリして下半身に電気が走るみたい」という松尾。
下半身の筋肉や筋をじっくりとほぐす
呼吸を整え、身体を動かす準備ができたところで、ここからが本番。サイクリストが主に使う下半身の筋肉を集中的にケアしながら全身のポーズをとる。
半分の太陽礼拝(ハーフサンサルテーション)
呼吸のペースに合わせて両腕を上にあげ、胸を開いたあと前屈するという一連のポーズを繰り返す。
その名の通り太陽に向かって行うイメージで、呼吸と動きを途切れることなく動かすことで血行を改善し、全身の筋肉や関節を緩める効果がある。ペダルを回す運動で使い続ける股関節やひざ関節などの大きな筋も伸びる。
戦士のポーズ1番
脚を前後に開き、後ろで両肘をつかんで上半身を前脚の方向へ倒し、「脇腹を強く伸ばす」という意味の「パールシュヴォッタナーサナ」というポーズをとる。ここで、上体を倒す松尾からうめき声が漏れる。普段意識しない脚の裏全体を伸ばす刺激が予想以上に筋肉に響いた様子。まさに、サイクリストの“盲点”を感じさせるポーズだ。
ここから上体を戻し、上に伸びることで股関節の曲げ伸ばしに重要な「腸腰筋」(ちょうようきん)をケアする「戦士のポーズ1番」へ。「ダンシング」などで負荷をかけている筋肉を労わるイメージで行う。
戦士のポーズ2番~三角のポーズ
今度は正面を向いて肩幅の2倍くらい足を開き、片方の足を前に出し、骨盤を開くイメージで内腿をひざと同じ方向に向ける。「戦士」のようにどっしりと両脚で踏ん張り、上体だけを動かすのがポイント。
「三角のポーズ」の組み合わせることで、下半身のみならず首・肩・背中など、サイクリング中に固まりやすい筋肉をほぐす。
松尾「筋肉へのジワジワした刺激が新鮮」
屍(しかばね)のポーズ
最後は「屍のポーズ」でクールダウン。刺激を与えた筋肉を調整するだけでなく、ヨガで活性化した副交感神経のはたらきを増幅させ、リラックス効果を高めるポーズでもある。
体験したことのないリラックス効果だったのか、松尾はこの「屍のポーズ」からしばらく身体を動かすことができなかった。これには松尾本人も驚いた様子だった。
「サイクリストヨガ」の体験を終えた松尾は、「いつもの運動と違い、各部位を意識しながら筋肉をすみずみまで動かした感じで、ジワジワした刺激が新鮮でした。身体がすっきりしているし、ぽかぽかと温かい。ちゃんと覚えて、トレーニング後や疲労が蓄積した頃に取り入れてみたいです」と、かなり気に入ったようだ。
大宅さんは「ヨガは最初からできることではないけれど、普段から運動しているだけあって体幹の使い方や身体の柔軟性がさすがだった。ヨガを取り入れて、さらなるパフォーマンスアップやメンテナンスにつなげてもらえれば」と話している。