『シン・ゴジラ』 - 滅びゆく日本の断末魔
シン・ゴジラ
SHIN GODZLLA
2016/日本 総監督/庵野秀明 監督/樋口真嗣 出演/長谷川博己/竹野内豊/石原さとみ/高良健吾/松尾諭/市川実日子/余貴美子/國村隼/平泉成/柄本明/大杉漣/他
現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。
毎日々々よくもまあ飽きもせずに暑いのと、各位のポジショントークが面白すぎた所為で観てから一週間以上経ってようやく『シン・ゴジラ』について何らかをば書く次第です。シン・ゴジラ。個人的には総監督が庵野秀明であるとかそういう事はどうでもよくて、と書くと少し語弊があるので補筆させていただきますと、少年エースでエヴァンゲリオンが始まった当時にアッ何かこれ面白そうと読み始めて(ついでにアニメも観始めて)、社会現象だセカイ系だと祭り上げられるにつれ段々とシラケていった程度の人間が言う「どうでもよくて」だと認識していただけると幸いです。滝本竜彦先生がああなられた事には衷心よりご同情申し上げます。というかあの頃は狂っていて自分でも何考えて生きてたんだかよく思い出せないのですが。ほで、何考えているのかよく分からないと言えば本作のゴジラの目ですよ目。ひと、にんげんに置き換えてみると、中学校をギリ卒業してその足で土建業(非認可)の世界に踏み込んで、流れでそのまま部屋住みになってしまったようなアウトサイドなあの目! あんな眼球を保持した生き物が日本(=東京)に歴代最大の質量を伴って上陸してくるという時点でホワイトカラーたちが騒然となるのもむべなるかな。市井のかたち/感情/鬱憤をゴジラが代弁しているような気にもなりつつ、衆愚の姿が描かれていないという批判は批判として三割程度しか有効でないような気もするのです。怪獣と闘っているウルトラマンの足下に思いを致す程度の想像力でそこは補える。そうやって脳のカロリーを少々消費するだけで、市川実日子たむによる極端な早口言葉や、石原さとみたむのカタコト英語による耳レイプが楽しめるのだからゴジラ様々です。あと100匹くらい上陸してくれないかなぁ。とは言い条、本作は都民による都民のためのTOKYO映画なので、我々地方民にとっては“見慣れた風景や自分の勤務先が破壊される快感”というものが、やはりスクリーン一枚隔てた遠い世界の悦楽でしかないというのは悲しいところ。各位が爆笑していらした終盤のある兵器(兵器?)に関しても個人的には「はぁ?」って感じでありましたし、関東地方が(フィクション上で)大変だ、日本を憂え、この非国民がと全体主義を仄めかされても頭突きの一発でも以て返答するしかないのですが、ただゴジラの上陸と移動に祀り方を間違えていないのは1954年への熱い目配せ。散りばめられたヱヴァネタなんてのはテキスト上の情報でしか知らないのでまあ置いとくとして、単純に、あの破壊に、熱線に、そして半減期を明言された放射能被害に、かつてのそして現在進行形のあの災害を持ち出してつべこべ並べ立てる右や左の人の言い分も、理解できるかは別として言いたい事は分かりますし、ポリティカル活劇としてゴジラという災害をシミュレートする、てな本作のコンセプトからもそうした言論が色濃く噴出してしまうのは仕方がない。「庵野秀明は安倍晋三の意思を忖度した」だの「実際に観ていない人からの批判」だのそういうウワゴトも清濁併せ呑んでこそのシミュレーション。閣僚が優秀過ぎるとか日本的なシステムではこれこれこうなるはずだ(願望)という意見も多々あれど、それらは別にリアリティを表現するための前提とされていないのです。その意味では、大怪獣デブラスが映画化されるとこんな感じなんだろうなぁ、笑ける。程度の認識で本作に臨む方が手に汗握る事ができるかも知れません。そういえば伝聞直聞き問わず私は日本ageには辟易しているクチなのですが、本作のゴジラに対抗する主体を“個々のヒーローたちに役割分担された職務”と受け取るか、“日本機構株式会社”と受け取るかが評価の分水嶺となっているような気もします。いずれにせよ後半の輝き始めるニッポン機構の出来レースっぷりに爆笑しつつ、滅び行く日本の断末魔を聞いた気がするのも自分だけではありますまい。
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20160809 │ 映画 │ コメント : 0 │ トラックバック : 0 │ Edit