今回は台風シーズンの到来にちなみ、
ガラスの耐風圧設計に欠かせない『風』について、
よくある質問も交えて解説いたします。
- “風”と“風速”
- 風は、空気が流れることで発生します。
1秒間に流れる空気の距離が“風速”で、
毎秒○○メートル、○○ m/秒、○○m/sと表現します。
一般的に“風速”とは、10分間の『平均風速』を指しています。
『最大風速』は、10分間平均風速の最大の値です(天気予報などで「12時の風速が5.2 m/秒」と
表現しているのは、11時50分から12時00分の平均風速が5.2m/秒ということです)。
風速は絶えず変化していますので、ある瞬間の風速の最大値は『最大瞬間風速』と呼ばれ、
同じ時間の最大風速の1.5~2倍以上になる場合もあります。 - 風圧力とは?
- 風は、物に当たった時に圧力に変わって『風圧力』となり、
建物外部に使用される窓ガラスにも、『風圧力』が作用します。
『風速』と『風圧力』の関係は、以下の通りになっているので、
『風速』が 大きくなると『風圧力』が大きくなることが分かります。
W = 0.56×C×V2 W:風圧力、C:風圧係数、V:瞬間風速
係数0.56は台風時を想定しています。台風時以外は0.61を用います。
通常、建物のガラスは、風圧力に対して破壊しないように設計されています。
この風圧力を設計風圧力といいます。
従って、強度計算の際に用いる設計風圧力 W(N/㎡)を瞬間風速V(m/秒)に換算すれば、
破壊しない風速を導き出すことができます。
では、実際に計算してみましょう。
東京都23区に建つ2階建住宅(建物高さ7m)の2階の窓(地上高さ6m)の設計風圧力は約1290N/m2で、
この風圧力に耐えられるようなガラスが使われて いるとします。ここではC=1.0 とします。
この場合に、設計風圧力を瞬間風速に換算すると、以下の通りになります。
従って、『風速48.0 m/秒まで耐えられるよう設計されている』ということに なります。
風の強い沖縄県などは、設計風圧力が東京よりも大きいので、
もっと大きな 風速にも耐えられるような強度設計をされたガラスが使われていることになります。
【参考】過去に観測された最大瞬間風速ベスト3
● 第1位 85.3m/秒 (1966年9月5日 宮古島)
● 第2位 84.5m/秒以上 (1961年9月16日 室戸岬)
● 第3位 78.9m/秒 (1970年8月13日 名瀬)
ちなみに東京都23区の過去最高最大瞬間風速は、46.7m/秒。
これらのデータは、各地の気象台ホームページなどで、調べることができます。
注1) | 風圧力と瞬間風速には一定の関係があることは確かですが、その対応関係を正確に求めることは困難です。耐風圧検討では、建設省告示第1454号、第1458号で規定される風圧力を使用する必要がありますが、ここでは設計風圧力と瞬間風速の対応関係を、あくまでも参考として示しています。 |
注2) | 大気圧により空気密度などが変化するため、ここでは台風時の式を示しています。 |
注3) | 平成12年建設省告示第1454号、第1458号では、設計風圧力を求める際の風速として平均風速を用いていますが、ここでは旧告示の風圧係数Cを用いることで瞬間風速を算出しています。風圧係数は、建物の形状や部位により異なりますが、正圧では0.5~1.0程度になります。(参照文献:斎藤平蔵,「建築気候」p207,共立出版) |
注4) | 風圧係数は風力係数と称する場合もあります。 |