天皇陛下、お気持ち表明 生前退位に強い思い

2016年8月9日6時0分  スポーツ報知
  • 象徴としての務めについてのお気持ちを表明される天皇陛下。ビデオメッセージは7日夕、皇居・御所応接室で収録された(宮内庁提供)

 天皇陛下は8日午後3時、象徴天皇としての務めについてのお気持ちを11分間のビデオメッセージで表明し、皇太子さまに皇位を譲る生前退位の実現に強い思いを示された。82歳となり、次第に進む体の衰えを考慮し「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないかと案じています」と語り、国民に理解を求めた。退位の実現には皇室典範の改正などが必要となる。政府は既に水面下で検討を開始。安倍晋三首相(61)も8日、法整備に向けた対応をする考えを示した。

 天皇陛下の生前退位をめぐる動きが表面化してから26日。黒いスーツに青色のネクタイ姿の天皇陛下は冒頭、着席したままカメラに一礼。手にした5枚の原稿を見ながら、「象徴天皇」の在り方について国民に向けて語りかけた。

 「次第に進む身体の衰えを考慮する時、象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」。追い求めてきた理想の象徴の姿と、老いという現実とのギャップ。約11分間のビデオで、陛下が胸に抱いていた苦悩を初めて国民に明かされた。

 一刻も早く自分の言葉で真意を伝えたい。映像での発信にこだわったのは陛下だった。自ら筆を執り、宮内庁幹部と推敲(すいこう)を重ねた。カメラに目線を送りつつ、進行に応じて原稿用紙をスムーズにめくる…。1週間前以上前から皇居・御所で読み上げの練習を続けた。「8日午後3時」と日時を発表して周知し、7日夕に収録した。

 現憲法下で初めて即位した陛下が今回、自身の言葉で天皇の務めとして語られたのは「国民の安寧と幸せを祈ること」、そして「人々の傍らに立ち、寄り添うこと」だ。公務を通じ「国民と共にある」ことの重要性を強調。皇后さまと実践してきた、被災地への訪問や慰霊の旅で「大切な務めをなし遂げたことは幸せなことでした」と、これまでの歩みを振り返った。

 その上で、高齢化に伴う負担軽減での対応には「国事行為や、公務を限りなく縮小していくことには無理があろう」と言及。昨年1年間の公務は270回以上。病気などで公務を果たせなくなる事態を危惧した。天皇の心身が重篤な場合に置く摂政については否定的な考えを示した。

 2012年に心臓の冠動脈バイパス手術を受け、体力の低下を覚えるようになった頃から「どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるか考えるようになりました」。宮内庁の風岡典之長官は会見で、陛下が5、6年前から同庁幹部に相談、昨年には自身の気持ちを公表することを考え始めたと明かした。

 憲法上、天皇は国政に関する権能がないため「個人として考えたことを話したい」とし、「退位」という言葉は用いなかったが、最後には国民への理解を求め頭を下げられた。生前退位の制度の必要性を訴えていることが、ひしひしと伝わるメッセージだった。

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