北京中心部の繁華街、王府井(ワンフーチン)にあるアップルの旗艦店は、活気に沸いている。だが、「iPhone(アイフォーン)」の製造元である同社にとって残念なことに、大半の人は商品を買いに来ているわけではない。
店員によれば、問題の一部は短期的なものかもしれない。ある従業員は、多くの中国人が新型の「iPhone7」が9月に発売されるまでアップル端末を買うのを控えていると言い、大型新製品を投入する前の販売の凪(なぎ)は当然予想されることだと付け加える。「懸念を抱く理由はない。新型の携帯が出たら、販売は上向くだろう」とこの従業員は話している。
ティーンエージャーの若いいとこに店内を案内して回っていた年配女性のリウ・シャンさんは、一見すると携帯を買いに来たように見える数少ない客の一人だ。だが、熱心なアップルファンだという様子は見せない。アップルにとって中国を米国外で最大の市場にしたのはファンの存在なのだ。
「いとこはまだ学生ですよ」。リウさんは展示されている「iPad(アイパッド)」に目をやりながら、付き添ってきた女性についてこう語る。「だから、iPhone7を待つ必要なんてない。実用にこだわります」
興奮を欠くこの状況は、アップルが中国で直面しているより大きな問題を指し示す。技術の高い端末を生産する中国の安価なライバル企業との競争が激化するなか、今年4~6月期に同国での売上高が3割減少したことは、スマートフォン(スマホ)の買い物客を魅了するアップルの力が減退したことを示す兆候だ。
売上高の減少は、驚くべきことではなかった。中国最大の検索エンジン、百度(バイドゥ)は、キーワード検索回数の減少をアップルストアへの来店客数の代理指標として使い、中国におけるアップルの四半期売上高が前年比で23~34%減少すると正しく予想していた。
■「トレンドフォロワーのように見える」
中国のスマホユーザーはもう、以前のように派手な前宣伝を受け入れない。2009年にアップルが最初にiPhoneを発売したときは、中産階級の若い消費者にとってiPhoneはステータスシンボルだった。
アップルは中国市場を狙った新型スマホを数種類投入することでその地位を固め、昨年は一時、中国スマホ市場のトップに躍り出た。