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 長崎への原爆投下から71年となった9日、長崎市の平和公園で平和祈念式典が開かれた。田上(たうえ)富久市長は平和宣言で、核兵器禁止を巡って国々の対立が続いていると指摘し、核廃絶に向けて「人類の一員として英知の結集を」と呼びかけた。

 参列者は原爆が投下された午前11時2分に1分間黙禱(もくとう)した。田上市長は平和宣言で、オバマ米大統領の広島訪問に触れ「大統領は、自分の目と、耳と、心で感じることの大切さを世界に示した」と指摘。核保有国の首脳らに、被爆地を訪れて「原子雲の下で人間に何が起きたのかを知ってください」と呼びかけた。

 また、核兵器禁止の法的枠組みを話し合う国連核軍縮作業部会に核保有国が参加していないことや、核兵器禁止条約を主張する非保有国と「核の傘」に依存する国々の対立が続いている現状への懸念を表明。核廃絶に向けて「今こそ、人類の未来を壊さないために、持てる限りの『英知』を結集してください」と訴えた。

 日本政府に対しても、非核三原則の法制化や、地域内への核兵器による攻撃や威嚇をしないことを核保有国に約束させる「北東アジア非核兵器地帯」を創設して、核抑止力への依存から脱却するよう求めた。

 被爆者代表として長崎県被爆者手帳友の会の井原東洋一(とよかず)会長(80)は「平和への誓い」で、国会と日本政府に対し「アメリカの核の傘に頼らず、核保有国に核兵器の先制不使用宣言を働きかけるなど、核兵器禁止のための名誉ある地位の確立を」と訴えた。

 式典には核保有国8カ国を含む53カ国の大使らも出席。被爆70年の昨年は過去最多の75カ国だった。米国のキャロライン・ケネディ駐日大使は欠席し、ジェイソン・ハイランド臨時代理大使が参列した。

 式典では、この1年に死亡が確認された3487人の名前が新たに記された原爆死没者名簿が奉安され、奉安された人の総数は17万2230人になった。今年3月末現在の長崎・広島の被爆者の平均年齢は80・86歳と高齢化が進んでいる。(岡田将平)

■長崎平和宣言の骨子

・被爆の実相を知ることは大切。核保有国首脳らは被爆地訪問を

・核なき世界の実現に向けた人類の英知の結集を

・日本政府は、非核三原則の法制化と「北東アジア非核兵器地帯」創設の検討を

・戦争と被爆体験の継承が重要。次世代は平和の取り組みへ参加を

・日本政府は被爆者援護を充実させ、被爆体験者救済を