滋賀焼き畑で町おこし 余呉の赤カブ栽培
過疎化が進む長浜市余呉町中河内で、かつてさかんだった焼き畑農法で赤カブの「ヤマカブラ」を育てる取り組みが進んでいる。大学関係者らが十年ほど前から始め、ブランド化による町おこしも視野に入れる。 六日、福井県境に近い国道365号沿いの区有林。わずか二十五世帯の集落に、県立大、京都学園大の学生やOB、地元の住民ら四十人が集まった。 雑木を切って整備した斜面に一斉に火を放ち、トタンに囲まれた四百平方メートルを三時間かけてじっくり焼き払った。十一月の収穫に向け、うっすらと灰が積もった地面にヤマカブラの種をまいた。 「焼き畑は、化学肥料も除草剤もいらない究極の有機農法。荒廃が進む里山の再生にもなる」。活動を取り仕切る京都学園大の鈴木玲治准教授(土壌学)は力説する。 灰には栄養が含まれ、土が焼けると植物の生育に必要な窒素が出る。雑草の種が焼き尽くされ、除草の手間も省ける。森林の伐採と再生の循環を活用した「持続可能な農法」として、各地で再評価されているという。 鈴木准教授は「焼き畑は環境破壊というイメージを持つ人もいるが、十〜二十年の休閑期間を設ければ、土地は回復する」と説く。 余呉地区では一九六〇年代まで、水田に適さない山の斜面で焼き畑栽培がさかんだった。主に育てたのが、こぶし大の在来種ヤマカブラ。家庭で漬物にして親しまれ、「歯応えがよく、色も鮮やか」と評判だった。 だが、斜面には大型機械を運べず、栽培に負担が大きいため衰退。二十年前に姿を消し、ヤマカブラ自体も一般的な畑でほそぼそと作られるだけになった。 農法の保全を目的に始まった復活の取り組みでは、収穫物は地域の祭りで売ったり、参加者が持ち帰ったりしている。一部は漬物に加工して長浜や米原市内で販売しているものの、品質が安定していないため、まだ活用は限定的だ。 鈴木准教授は「将来は『焼き畑のヤマカブラ』と売り出し、地域活性化につなげたい」と話す。地元自治会長の佐藤登士彦さん(79)はブランド化に期待するとともに、「過疎の集落に、活動のたびに若者がやって来て、交流できるのがうれしい」と笑顔だ。 (渡辺大地) PR情報 |
|
Search | 検索