有識者会議を設置へ 政府
安倍晋三首相は8日、天皇陛下のお気持ちの表明を受け、「国民に向けてご発言されたということを重く受け止めている」と述べ、政府として対応を検討していく考えを表明した。政府は、広く国民の代表から意見を聞く有識者会議を設置し、議論を踏まえて法整備を検討する。
首相は陛下のビデオメッセージ放映が終了した約15分後、首相官邸で、記者団の前で用意された原稿を読み上げる形で発言した。この中で首相は「ご年齢やご公務の負担の現状に鑑みるとき、天皇陛下のご心労に思いをいたし、どのようなことができるか、しっかり考えていかなければいけない」と語り、検討に入る考えを示した。具体的な対応についての言及は避け、首相自らの受け止めを示すにとどめた。陛下の発言が憲法で禁じられている天皇の政治的行為だと指摘されないよう、すぐに対応を示すことを控えたとみられる。
この後、記者会見した菅義偉官房長官は首相の発言について「天皇陛下のお言葉に対し、率直な思いを述べた」と説明。そのうえで、陛下のお気持ちについて「国政に影響を及ぼすようなご発言ではなく、憲法との関係で問題になるとは考えていない」と述べた。
皇室典範には退位の規定がないため、生前退位を実現するには、皇室典範改正や特別立法などの法整備が必要となる。政府は憲法上の問題を指摘されないよう、一定の時間を置いたうえで有識者会議を設置し、政府が主体的に検討する形を取る考えだ。【田中裕之】