宮内庁は8日午後3時、天皇陛下が「象徴としてのお務め」についてのお気持ちを示したビデオメッセージを公表した。社会の高齢化が進むなか、自身も82歳になったことを踏まえ、陛下は「次第に進む身体の衰えを考慮する時、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか」と懸念を表明。憲法上の立場から直接表現することは避けながら、「私が個人として」と強調し、天皇の位を皇太子さまに譲る将来的な退位の願いを強くにじませた。
ビデオメッセージは7日夕、お住まいの皇居・御所で収録され、約11分にわたった。天皇陛下がビデオメッセージを公表するのは、東日本大震災後の2011年3月以来、2回目。
天皇陛下はお気持ちで、03年の前立腺がん、12年の心臓と2度の手術を受け、高齢による体力低下を覚えるようにもなり、「従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合」を見据え、どのように身を処していくべきか考えるようになったと明かした。
陛下は即位からの約28年を振り返り、日本各地の訪問を大切なものだとして「国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは幸せなことでした」と振り返った。
一方で、陛下は国事行為や公務の縮小は「無理があろうと思われます」と述べつつ、皇太子が国事行為を代行する摂政(せっしょう)については「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」と消極的な考えを示した。
天皇の代替わりにも言及し、「喪儀(そうぎ)に関連する行事」と「新時代に関わる諸行事」が同時に進行するため、行事に関わる人たちや残された家族が非常に厳しい状況下に置かれるとして「こうした事態を避けることは出来ないものだろうか」との思いを述べた。
最後に、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくこと」を念じるとして、「国民の理解を得られることを切に願っています」と結んだ。メッセージ全体は、自らが元気なうちに皇太子さまに天皇の位を譲る願いが貫かれた。
宮内庁の風岡典之長官は同日午後の会見で、陛下のお気持ちについて「今後の天皇のあり方について個人としての心情、ご感想を、ご自分のご年齢や健康にも触れてお話しになったことだ」と説明し、「宮内庁として陛下のお気持ちが国民に広く理解されることを願っている」と語った。
安倍晋三首相は8日、天皇陛下の意向表明を受け、「天皇陛下が国民に向けてご発言されたということを重く受け止めております。ご公務の在り方などについては天皇陛下のご心労に思いを致し、どのようなことができるのかしっかり考えていかなければいけない」と首相官邸で記者団に語った。政府は今後、有識者から広く意見を募るなどし、世論の動向を踏まえた上でどのような対応が可能か検討を進める方針だ。(島康彦、多田晃子)
■メッセージの骨子
●80を越え、身体の衰えを考慮すると、象徴の務めを果たすことが難しくなることを案じている
●国事行為や象徴としての行為を縮小することには無理がある
●摂政を置くのも、務めを果たせぬまま、天皇であり続けることに変わりない
●健康を損ない、深刻な状態になると、社会が停滞し、国民の暮らしに影響が及ぶ懸念がある
●終焉(しゅうえん)に当たっては喪儀と即位の儀式が同時に進行し、行事に関わる人や家族が厳しい状況になる
●国民の理解を切に願っている
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