かるび(@karub_imalive)です。
以前からネットで話題になっていて、大評判な「中間管理録トネガワ」が、この8月に既刊も含め、1巻~3巻までKindle化されました。僕も、遅ればせながらポチッと全巻まとめ買いしたのですが、これが面白すぎました!
今日は、この「中間管理録トネガワ」について、感想を書いていきたいと思います!
- 1.中間管理録トネガワとはどんなマンガなのか
- 2.舞台設定は典型的なブラックオーナー企業
- 3.面白さのポイントは、トネガワの立ち回り
- 4.良かったのはどこまでもギャグ漫画路線であるという点
- 5.思えば僕の最近までのサラリーマン生活はトネガワそのものだった
- 6.まとめ
1.中間管理録トネガワとはどんなマンガなのか
もともとは、福本伸行の「賭博黙示録カイジ」でのカイジの敵役として、カイジを苦しめた帝愛グループの大幹部、利根川幸雄。本編の物語中盤までは、まるで王のように振る舞います。しかし「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「Eカードと、カイジと死闘を繰り広げた結果、最後にカイジに負けてしまいます。すると、帝愛グループ会長であるワンマンオーナー、兵藤和尊会長が登場してからは、彼の前では一中間管理職にすぎないことが描かれます。結局、彼はカイジに負けると、兵藤にあっさり切り捨てられてしまいます。
この「中間管理録トネガワ」は、そんな利根川幸雄がまだ帝愛グループで曲がりなりにも一応地位を保っていた時期、つまりカイジ本編よりも少し前の時代の、トネガワの中間管理職としての苦悩と葛藤を面白おかしく描いたスピンオフマンガです。
2.舞台設定は典型的なブラックオーナー企業
中間管理録トネガワが、幅広い読者から共感を呼んでいる背景には、その舞台設定があります。帝愛コンツェルンという企業を通じて、徹底的に日本企業をデフォルメして面白おかしく描き出しています。それでは、ちょっと利根川の所属する帝愛コンツェルンを見てみましょう。
2-1:典型的な前近代的ブラック企業
帝愛コンツェルンは、非合法すれすれの高利貸し、闇金融、裏カジノなどを抱えるなんでもありの、完全に時代錯誤なブラック企業です。「カイジ」本編では、人の死をなんとも思わないイベントや地下強制労働で借金を回収するなど、人の不幸や生き血をすすって儲けることも厭わない、そんな超絶ブラック企業であります(笑)
2-2:超ワンマン社長が仕切る、オーナー企業
帝愛コンツェルン総裁の兵藤和尊は、気分屋で、言うことがコロコロ変わる理不尽極まりない超ワンマン社長です。同社の大幹部トネガワであっても、オーナーの一挙手一投足にビビりながら会社生活を送る毎日です。電話一本で理不尽な指示を受けるのは日常風景と化しています。
そして、極めつけは会社内に兵藤会長専用の大浴場があるという(笑)題して、「王の湯」。
2-3:長時間残業に休日出勤
そんなオーナー企業ですから、トネガワも毎日夜遅くまでガッツリ働きます。物語中のメイン舞台である「第三会議室」で開かれる企画会議は、いつも深夜まで開催されます。
★兵藤会長の出待ちをする図
また、利根川クラスの大幹部であっても、20連勤などは当たり前。羽を伸ばせるのは福岡や大阪への出張電車の中だけというタフな状況です。
2-4:自宅、私生活は一切出てこない
そんなわけで、この「中間管理録トネガワ」には、ものの1コマも利根川幸雄の私生活を描いたシーンは出てきません。いつも帝愛社内にいます。強いて言うなら、土日を潰した社員慰安旅行です。(しかしほぼ仕事/笑)
3.面白さのポイントは、トネガワの立ち回り
さて、そんな超絶前近代的ブラックオーナー企業で健気に中間管理職として身を捧げる主人公トネガワですが、その面白さのポイントは、なんといっても中間管理職としてのトネガワの描かれ方です。
3-1.上下に挟まれる中間管理職
基本的には、仕事ができて、他の黒服(=モブキャラ)よりは優秀なんです。でも、長年の過酷な労務環境の中、なんだか少し疲れも溜まっていて、ヘマもしてしまう。
また、幹部のくせにゴマすりもいまいち下手くそで、上司である兵藤会長の言動を気にしすぎるあまり、部下への言動がブレまくり、適当なところで小物感を醸し出してしまう、ダサい中間管理職なのです。
でも、作中では、いきあたりばったりながら、上司に気を使い、部下をそれなりに鼓舞しながら、神経をすり減らしつつ頑張っていて、憎めない感じもあるオジさんなのですよね。
3-2.パソコンは一切使うシーンなし
オジさんなので、会議は口をだすだけで、パソコンを触るシーンやネットで何かを検索したりするシーンは一切なし。かろうじて、携帯電話で理不尽な兵藤会長の指示を受けるシーンはいくつかあります。
作中の会議室やデスクにも、一切パソコン類は置いておらず、目の前には灰皿だけ。オジさんらしくIT関係は弱そうです。作中でも、部下の黒服がパワポを使うシーンで圧倒されているところを描き出されており、非常に微笑ましいです。
3-3.飲みニケーション、集団行動が大好き
第1巻~第3巻まで、約20話弱ある中で、合宿1回と飲み会2回、部下とサシで飲んだのが1回、飲み会を企画したが潰れたのが1回、社内接待が1回とひたすら社内で濃い付き合いを重ねます。まさに昭和のザ・サラリーマンという感じが面白い!
4.良かったのはどこまでもギャグ漫画路線であるという点
最初、書店で1巻の途中まで試し読みした時は、主人公トネガワが失敗を重ねつつ、プロジェクトの成功にたどり着く中で得た学びや気づきを読者にフィードバックするような、ビジネス書的なアプローチなのかなと思っていました。
でも全く予想はいい意味でハズれました。
そんな高尚な路線ではなく、ひたすらギャグ漫画でした。社内接待、出張、入社面接、インフルエンザの蔓延・・・など、身近なネタが、カイジの世界観の中で、トネガワ目線でドタバタ劇として展開されていきます。昭和の古き良きサラリーマン生活のシュールなバカバカしさが、決してキツくなりすぎず、単純にゲラゲラ笑えるレベルでテンポよく描かれます。
実際、リアルにトネガワ的なサラリーマン生活を送っている人はかなりいるはずです。そして、現実のリアルトネガワ的会社生活は結構つらいはず(笑)だからこそ、こういう後に引かないカラッとした笑いにデフォルメ・昇華されたストーリー展開は非常に良かったと思うのです。そして、個人的にはものすごく共感できた(笑)
5.思えば僕の最近までのサラリーマン生活はトネガワそのものだった
この「中間管理録トネガワ」は、極端に昭和の企業戦士・中間管理職をデフォルメして描いていますが、ここで描かれている中間管理職の悲哀やキツさは、「あーわかるわかる」って言える人は多いんじゃないでしょうか?
僕も、非常によくわかります。
現在、僕は、2016年5月からしばらく自主サバティカル期間中ということでお休みを頂いています(つまり無職)が、前職は、トネガワ程ではなかったですが、「オーナー独裁のワンマン中小企業」での経営幹部クラスの立ち位置だったのでした。東京のITシステム開発を手掛ける会社だったのですが、そこで営業や採用をメインで担当していました。
そして、退職する直前までの数年間は、まさにトネガワ状態。20連勤休みなし・・・やりました。普通にありました。社員旅行や管理職の合宿、社員研修、長時間残業など盛りだくさんでしたね。
また、経営幹部ですが、幹部に昇進すればするほどオーナーに近い立ち位置になり、逆に自由がなくなっていくというパラドックスもありました。オーナーの鶴の一声で、休出が簡単に決まったり、理不尽な対外交渉なども沢山やらされました(笑)
トネガワもそうですね。大幹部なのに、会議では部下が寝坊しても必ず朝一で来て、夜は必ず最後まで会議室に一人残っているシーンがきっちり描かれています。そして、電話1本で兵藤会長から電話での呼び出しも・・・。共感できるところ多すぎ(笑)
6.まとめ
「中間管理録トネガワ」は、最近読んだマンガの中では、久々にお腹を抱えて笑える作品でした。購入して、読了してすぐに何度もリピートして読みかえしてしまいました。ガラパゴス的な日本企業の中間管理職の難しさや悲哀を、これだけ笑いに変えて作品に仕上げられる構成力は素晴らしいと思います。なおかつ、それでいて元の「カイジ」の作品の雰囲気も全く壊れていないという、、、
この作品は、特に今サラリーマン生活を頑張っている人にこそ、読んで欲しい傑作です。大好評につき、まだまだ連載は続いていきますが、是非Kindle化された今の時点で、まとめ読みしてみてはいかがでしょうか?お勧めのマンガです!
★本編、「賭博黙示録カイジ」は、2016/8/8現在、全巻Kindle Unlimitedで読み放題になっています。読み放題はこちらです!
それではまた。
かるび