宮内庁ではビデオメッセージが放映された直後に風岡典之長官が記者会見した。風岡長官は「天皇陛下は高齢となった天皇の象徴としてのあり方やお務めについてお話しされた」と説明。「今すぐお務めが難しくなるということではない」とも述べた。天皇陛下が言及した代替わりについては「大喪とご即位が重なれば厳しい状況になることについて、ご経験を踏まえて述べられたと思う」と話した。

 風岡長官は80代となった陛下の年齢を「一つの大きな節目」とし、昨年から陛下が「象徴のあり方についての気持ちを公にするのがふさわしいのでは」と考えていたことを明かした。だが1月にはフィリピン訪問などもあり、考えや準備が整ったこの時期の表明になったという。

 質疑応答では、天皇陛下の発言は憲法に抵触するのでは、との質問も出た。これに対し風岡長官は「陛下ご自身は憲法上の立場を踏まえながら話をした」とし、「象徴としての活動をされるのは陛下ご自身。経験を通じての思いを述べていただくのは陛下にやっていただくのが一番ふさわしい」と説明。これまでに陛下の意向を踏まえ、制度改革の必要性を内閣などに相談したか、と問われると、「陛下が思いを述べることについてはやりとりしているが、措置を講じて欲しいとか、制度を設けて欲しいとかは一切申し上げていない」と説明した。

 メッセージは7日夕、お住まいの皇居・御所内の応接室で収録した。皇后さまは当初、収録には立ち会わない意向だったが、「大事な事柄であるので」との陛下の考えに従い、少し離れた場所で収録を見守ったという。関係者によると、皇后さまは東日本大震災後のメッセージ公表の際は、陛下とともに文面を考え、収録を近くで見守った。今回、公表前には皇太子さまや秋篠宮さまらも目を通した。文面は陛下自身の発案だが、憲法上の立場を踏まえ、ある段階からは内閣官房とも協議したという。

 天皇陛下は2012年春ごろから、皇太子さまや秋篠宮さまと月に1回程度懇談している。風岡長官によると、懇談は皇后さまが発案したもので、陛下は皇太子さまや秋篠宮さまに自身のお気持ちを話しており、「両殿下は十分ご理解されていると思う」と述べた。陛下は7月23日にお住まいの皇居・御所に皇太子さまや秋篠宮さま、長女の黒田清子さんを招いており、この場でも意向表明などの話題が出たとみられる。(多田晃子)